聴覚障害者らが避難体験 広域避難所の課題を検証
2024年03月05日 のニュース
耳の聞こえに不安がある人が避難をする時、必要な物や課題はないか-。聴覚障害の当事者、支援者団体と京都府福知山市が協力して防災訓練を開いたところ、避難所スタッフと避難者の意思疎通をスムーズにするため、もいろいろと工夫が必要なことなどが見えてきた。
団体は「聴覚障害者の豊かな暮らしを築く福知山ネットワーク」(古高春美代表)。訓練は2日、内記二丁目の市総合福祉会館であった。事前にチラシなどで告知し、当日の決められた時間内に「避難をして来てください」と呼びかけ、聴覚障害者ら12人が参加した。
福祉会館は48カ所ある市の広域避難所の一つに指定されており、台風などの際に開設されている。今回の訓練でも実際の開設時と同様に、市職員1人が配置され、受付で避難してきた人に名前や住所の記載を求めたあと、3階の和室に上がるよう筆談ボードで伝えた。
避難後には、訓練の様子を見守った他の市職員らも加わり、全体での振り返りをし、避難者からは「受付だけで、案内のスタッフがいないので、迷いそうになった。非常時で人員が割けないことはわかるので、案内図を用意しておいてもらえるとありがたかった」「避難後の和室で、その後の状況が分からず不安だった。状況説明は欲しいが、難しければテレビを置いてもらえると災害情報は自分でも確認できて安心につながる」といった声が上がった。
市職員側からは「今回は聞こえに不安のある人が対象だったが、本当の災害時にはさまざまな人が来るので、支援が必要かどうか気付けない可能性がある」などの意見が出た。
手話を使って生活する男性(35)は「言葉を文字にするアプリが入ったスマホを常備しているので、そうした物を持っているか聞いてもらえると、活用ができてやり取りがスムーズになったと思う」と訓練を振り返った。
また、3グループに分かれ、避難時に持ってくる物を検討。それぞれ、食料、飲料水、スマホなどを挙げ、市職員らが避難所に備えてあるものを説明し、「補聴器の電池はないため、自身で用意をしてもらう必要があります」と伝えた。
段ボールベッド、テント付きの簡易トイレの実物の展示もあり、訓練に参加した女性(53)は「ベッドは思ったよりしっかりしていましたが、トイレに課題もありそうです。実際にこうした備品を確認できて勉強になります」と話していた。
写真(クリックで拡大)=筆談で避難者の受け入れをする市職員