大洪水時に避難100%で命守ったエルサルバドル

2023年09月12日 のニュース

 福知山公立大学の地域防災連続セミナーがこのほど、京都府福知山市駅前町の市民交流プラザで開かれた。京都大学防災研究所の中野元太助教(36)が、避難率100%を達成した中南米・エルサルバドル共和国の事例について、紹介した。

 中野助教は2010年から2年間、青年海外協力隊として、エルサルバドル南部に位置するサンペドロ・マサウア市に派遣され、市役所の危機管理課に勤務。市内を流れる3つの大きな川が市の中心部で合流するため、市の3分の1が水没するような水害が頻繁に起きる地域だという。

 そこで、中野助教は各地区に自主防災組織を設置し、トランシーバーを配布して、ワークショップや避難訓練を実施。上流で水位が上がると、2時間後に下流で水位が上がることが分かっていたため、自主防災組織で川の水位を監視し、水位上昇を検知すると、上流の住民が下流の住民に知らせる態勢づくりを構築した。

 その結果、2011年の大雨では、エルサルバドル全土で34人が亡くなったが、中野助教が住む地域では、避難が必要な人全員が避難し、死者は出なかった。中野助教は「住民同士の主体的なコミュニケーションがうまくいって、避難率が100%になったが、そういう住民の姿勢はどこから生まれているのか考えなくてはならない」と切り出した。

 一つは、内戦など残虐な出来事を背景に、「住む場所を失った人たちが流れ込んできた地域で、これまで土地を失った人たちが作った新しいコミュニティーだったからこそ、自分たちの地域を何とか守りたいというような気持ちが強かったこと」だと説明。

 もう一つは、「良い意味でのヒーロー意識。自主防災組織の人はみんなオレンジ色のジャケットを着ているが、ジャケットを着ることによって自分は地域のことを担う、地域を守るヒーローなんだという意識が芽生えているように思う」と解説した。

 地域防災連続セミナーは公立大地域防災研究センター(水口学センター長)と地域経営学部の大門大朗准教授研究室が主催。1回目の今回は「時空を超えた防災の知恵-大正期の災害・防災思想とエルサルバドルの洪水避難事例から-」をテーマに開き、19人が参加した。

 このほか、阪神・淡路大震災記念「人と防災未来センター」主任研究員の高原耕平さん(40)は、関東大震災が起きた100年前の大正時代の防災研究者らの思想を解説。「災害は繰り返すものだ」という考え方から、明治時代以降の日本は、少しでも被害を小さくするために、防災を発展させていくよう変化していったことを伝えた。

 

写真(クリックで拡大)=エルサルバドルの事例を解説する中野助教(左)

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