「28水」経験者の証言動画が完成 災害の記憶風化させぬよう
2024年04月30日 のニュース
京都府北部など近畿地方を中心に甚大な被害をもたらした昭和28年(1953)9月の台風13号による大水害「28水」が発生してから70年が過ぎた。災害の記憶を風化させてはいけないと、福知山市は28水を経験した人たちの証言を集めた動画「二十八水の記憶」を制作。当時の様子を克明に語る9人の生の声がまとめられていて、町家を改装して水害の歴史を伝える市治水記念館(下柳町)で随時放映している。
「28水」は福知山市に近年最大の被害をもたらした。9月24日夕方から降り出した雨は総雨量278・5ミリとなり、25日午後9時ごろには、和久市町の堤防が決壊したことで、市街地一帯が濁流にのまれた。当時の福知山市域での死者は4人、家屋流出は55戸、全壊は428戸にのぼった。
市は当時を知る人たちが少なくなる中、未曽有の大水害の記憶を長く後世に伝え、今後の水防を考えるきっかけになれば-と、被災後70年の節目となった昨年から市民に呼びかけて体験談を募り、まとめた動画がこのほど完成した。
動画では9人が証言している。26、27歳の頃に被災した女性は、「土手の堤防が切れた途端、一気に水がきて、材木が流れてきた。飼っていた牛は助かったが、ヤギ、ニワトリは流され、本当に怖かった」と明かす。
被災時小学2年生だった男性は、自宅の前にあった溝の水が逆流してきた時に、堤防が決壊し、市街地に水が押し寄せたと証言。「隣家の空き地からはしごをかけて大屋根に上り、そこで一晩過ごした。家財道具を上げる時間は無かった」と話している。
高校1年生の時に被災した男性は「学校が休みになり、(水害で出た)街中のごみを集めて、田んぼに捨てる作業を自主的に行った」と語る。
証言は1人2分30秒ほどで、被災した年代ごとに、「小学生」「中学・高校生」「大人」の各編にまとめられている。
治水記念館の運営に協力する地元グループ「柳菱クラブ」の菅原俊雄会長(79)は「現在は堤防が整備され、外水氾濫(はんらん)は減っていますが、内水被害はまだあるので、動画を見て、多くの人たちに水害の恐ろしさを今一度知ってもらい、しっかりと備えてほしい」と話している。
開館時間は午前9時から午後5時(入館は同4時30分)まで。月、火曜休館(月、火曜が祝日の場合は、その翌日を休館とする)。入館無料。
写真(クリックで拡大)
・治水記念館で証言動画を放映している
・長町周辺で避難した大屋根から舟で救助される人たち(『福知山市水害写真史』桐村好文堂発行)