世界が愛した絵本作家・安野光雅さんの追悼展 京丹後の美術館「森の中の家」で
2021年03月09日 のニュース

世界が愛した絵本作家、安野光雅さんをしのぶ作品展が、京都府京丹後市久美浜町谷の美術館、和久傳の森「森の中の家 安野光雅館」で3月10日に始まる。子どもたちにやさしい目を注ぎ、見る人の想像力をかき立てる絵を生み出し続けた安野さんへの、万感の思いを込めて構成する。
安野さんは昨年12月24日に亡くなった。94歳だった。教員生活を経て、作家としては遅咲きのデビューとなったが、「絵の大好きな少年」の頃そのままに、晩年になっても創作意欲は衰えなかった。
大正15年(1926)、島根県津和野町生まれ。小学校の美術教員をしながら本の装丁などを手がけるうち、出版社からの仕事が多くなって昭和36年(1961)に画家として独立。昭和43年に、文章が無い絵本「ふしぎなえ」で絵本作家デビューした。
その後、独創的な作品を次々と発表し、児童書で最も歴史があり「小さなノーベル賞」と呼ばれる国際アンデルセン賞(国際児童図書評議会)をはじめ、各国で様々な賞に選ばれてきた。

「森の中の家 安野光雅館」は、京都市を中心に料亭などを営む和久傳が、創業の地に恩返しをと2017年6月にオープンさせた。晩年の作品を中心に多くの館蔵品を持ち、安野作品だけで期ごとに展示を企画している。今回は「描くために生きた-安野光雅 追悼展」と題し、津和野町立安野光雅美術館の協力も得て「旅の絵本VI」など絵本原画と風景画の代表作計62点を紹介する。
絵本のうち、「旅の絵本VI」はデンマークを旅して描いた2004年、78歳の作。「みにくいあひるの子」「人魚姫」などアンデルセンの童話の世界がちりばめられている。
「かぞえてみよう」は1975年の作。アメリカのボストングローブ・ホーンブック賞など国内外の賞を受けた作品。美しい田園風景を描いているのだが、初めて「数」に出会った子どもたちに、楽しく数字を見せてくれる作りになっている。

ほかに館蔵の「メアリ・ポピンズ」(2019年)、「赤毛のアン」(2018年)、「小さな家のローラ」(2015~17年)など晩年の意欲作も公開する。
また風景画の世界では、代表作「洛中洛外」から、大江山の鬼伝説を描いた「大江山の雲海」「由良川」「天橋立一字観」など8点を展示する。うち「雪の金閣寺」「琴引浜の夕日」は、これが初公開となる。
館内には安野さんへの「ありがとうノート」や花びらのメッセージカードを置いて、来館者に思いを記入してもらう。
6月7日まで。火曜休館。時間は午前9時30分から午後5時まで。一般1千円、中高生600円、小学生400円。電話0772(84)9901。
写真上=晩年も創作意欲が衰えなかった安野光雅さん
写真中=「かぞえてみよう」(c)空想工房(画像提供:津和野町立安野光雅美術館)
写真下=「メアリ・ポピンズ」表紙絵(c)空想工房(画像提供:森の中の家 安野光雅館)