種は全国へ-由良川藍を復活、市民に広めて25年 福知山同好会

2021年01月07日 のニュース

 かつて福知山市の由良川沿いで盛んだった藍の栽培と藍染めを復活させ、1995年に福知山藍同好会が発足してから、丸25年が過ぎた。節目の年を迎えた昨年は、新型コロナウイルスの影響で、発表会と由良川藍まつりを開けなかったが、今年の初夏に同時開催する計画を立て、記念誌の発行に向けた準備も進む。体調を崩している塩見敏治会長(86)=中=に代わり、妻で会長代理の勝美さん(82)に、同好会の歩みや今後の展望について聞いた。

福知山では、約600年前から由良川藍の栽培と藍染めが行われ、江戸時代に最盛期を迎えた。しかし、明治に入って外国から化学染料が輸入されるようになり、徐々に衰退。大正14年(1925)に、福知山から藍は消えた。

そんな由良川藍を復活させ、福知山の伝統産業に-と考えたのが、元市議会議員の塩見会長だった。本場の徳島県から種を取り寄せ、1982年に中地区で地元老人会と栽培を始めた。当時は、収穫した葉を滋賀県の紺屋に販売し、収入は老人会の運営費に充てていたという。

 そして95年3月には、染めにも挑戦しようと、勝美さんとともに、徳島県の郷土史研究家で、『藍染めはだれでも出来る』の著者、高田豊輝さんのもとを訪れ、いろはを教わった。

市内での藍染めの普及をめざし、まずは近所の人らに呼びかけ、同年5月に福知山藍同好会が発足した。会員らが藍の栽培を始め、染め液を作り、藍染めを楽しむ活動がスタート。8月には初の藍染めに成功した。中の養蚕小屋を改修し、2年後には活動拠点の「由良川藍の家」も設けた。

■地域活性化に一役と「のれん」プロジェクト■

作品の発表会などを継続する一方で、2003年には商店街の活性化、藍染め文化の広がりに期待し、藍のれんプロジェクトを始動。当初は、アオイ通りの荒物屋などから依頼を受け、「ぽつぽつと作る程度」だったという。

 それから、こつこつ続けるうちに8年の年月が流れ、趣旨に賛同した市が、プロジェクト事業を立ち上げたことが追い風となり、広小路通りから約50件、福知山旅館組合から約50件の計100件ほどの発注が殺到。市内各所の軒先で、藍色ののれんが風になびいた。

勝美さんは「藍でまちおこしという、当初の目標が実現できた瞬間でした。みなさんの協力がうれしくて、印象に残っている出来事の一つになっています」と振り返る。

■種の無料配布や震災支援活動■

また全国に藍染めの輪を広げようと、1996年から希望者に無料で藍の種を配る活動も続ける。これまでに全国5千人以上に送付し、種がアメリカやヨーロッパに渡り、海外での栽培に成功したケースもある。「うまく育ちました」など、うれしい便りが届くこともあるという。

2011年に発生した東日本大震災の被災地支援活動として、岩手県釜石市の仮設住宅に、藍染めの布を送ったことも。裂き織りやバッグ作りに活用され、「気分転換になりました」と喜ばれた。

 これ以降も、釜石市とは種や苗を送るなどして交流。現地に藍の工房も作られ、開所式に藍同好会の会員が駆けつけ、足を運べなかった会員の作品も展示され、喜びを分かち合った。

■子どもたちが伝統に親しむ機会を提供■

子どもたちにも伝統文化に触れてほしい-との思いで、藍染め体験を受け付けていて、地元の庵我小学校とさつき保育園では、藍の栽培から染めまでを行っている。「紺色に染まるハンカチなどを見て、目を輝かせる子どもの姿に、元気をもらっています」と目を細める。

現在の会員数は約80人。市内の20人ほどのほか、綾部、舞鶴といった近隣市や福岡、宮城、栃木など2府10県にも会員がいる。一方で60~70歳代が中心になっていて、会の将来を担う次世代の育成が課題という。

 そんななか、昨年加入した8人全員がたまたま30代~40代で、「将来の明るい兆し」と勝美さん。「若い人たちは新たな藍染めの使い方を考えたり、斬新な発想の作品を生み出してくれていて、今後が楽しみです」と期待している。

新規入会者の一人、四方裕美子さん(45)=北本町二区=は「2年ほど前に藍同好会の展示会を訪れる機会があり、同好会の存在を知りました。昨年3月に大阪からUターンし、何か趣味を持とうと、10月に入会しました」という。

今後について、「今年は藍の栽培から手がけたいと思っています。また娘が知的障害をもっていて、仕事の範囲が限られると思うので、ゆくゆくは一緒に作品づくりを学び、藍の商品を販売するなどして、将来の収入源にもつながれば」と話す。

今年は、歩みや会員の一言メッセージなどをまとめた記念誌を完成させ、3月ごろに各会員に配布予定。発足当初から続く発表会と、由良川藍まつり(販売会)も、6月に同時開催する方向で進めている。

勝美さんは「これからも新たなことに挑戦しつつ、伝統文化を受け継いでいき、地域活性化につながるような活動にも取り組みたい。発表会と藍まつりが開催できれば、ぜひ多くのみなさんに作品を見てもらいたい」と話している。


写真は上から順に
写真1=庵我小学校の児童たちに藍染め体験の機会を提供
写真2=藍同好会の会員たち
写真3=福知山城を染め抜いた大きなのれんを作り、市役所に飾ったことも
写真4=年末には次の年の干支をテーマに藍染めをした
写真5=染め液に何度もつけて色をつけていく

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