伝統の藍を復活させた塩見敏治さん 交流プラザで遺作展
2022年06月30日 のニュース
かつて福知山の由良川沿いで盛んに行われた藍の栽培と染め。その復活に心血を注いだ福知山藍同好会の前会長、故塩見敏治さん(享年87歳)の遺作展が、7月1日から京都府福知山市駅前町の市民交流プラザで開かれる。福知山藍同好会主催で、これまで手掛けた藍染め作品を展示。現在会長で、夫の活動を支えてきた妻・勝美さん(84)=中=も出展し、活動の歴史を紹介する。4日まで。
福知山では約600年前から、由良川沿いで藍の栽培と染めが行われ、江戸時代に最盛期を迎えた。その後、海外から化学染料が入ってきたことから藍は衰退し、大正14年(1925)には消えた。
由良川藍を復活させたいと、以前から願っていた敏治さんは、藍の本場の徳島県から種を取り寄せ、1982年に自宅がある中地区で、地元老人会とともに栽培を始めた。
95年3月には、染めもしようと、勝美さんと一緒に徳島県の郷土史研究家のもとを訪ねて指導を受け、同年5月には福知山藍同好会を発足させた。
染めは手探りの状態からのスタートだったが、勉強を重ね、型染めや嵐絞り、のり染めなどの技術を身に付けていった。
型染めの型紙の復活にも尽力。紺屋が使っていた型紙を借りて、自身で専用紙に彫り、その研究にも力を注いだ。また全国へ藍を広めるため、無料で種の配布も続けた。
2015年に病に倒れ、2年間は活動を休止。回復後、会の発表会などには顔を出していたが、昨年6月17日に、急性心筋梗塞のため亡くなった。
「もう一度、敏治さんの作品が見たい」という多くの人たちの願いを受け、遺作展の開催が決まった。遺作展に出す敏治さんの作品は18点。最初の作品「アイのはじまり」、福知山市展賞受賞の「藍のサイト曙光・和」や大型の「音の風景」(155センチ×183センチ)などが並ぶ。
勝美さんの作品は市展で奨励賞を取った作品を中心に9点を展示する。勝美さんは「主人は藍を福知山の産業にしたいという一心で活動してきました。のめり込むタイプで、さまざまな技法の染めで、苦労して一つの作品に仕上げていました。多くの人たちに作品を見てもらい、藍に興味を持っていただければうれしい」と願う。
入場無料で、開催時間は1日が午後0時30分~午後6時、2、3両日は午前10時~午後6時、4日は午前10時~午後3時。
写真上=染見本帳などを眺める在りし日の敏治さん(2009年)
写真下=遺作展に出す敏治さんの作品