観測史上最大規模の豪雨に対応 福知山市街地の治水完成

2020年05月19日 のニュース

 京都府福知山市の市街地で床上1586戸、床下1712戸の浸水被害が出た2014年の「8月豪雨災害」から6年。国、府、市が連携して河川改修や排水ポンプ強化などに取り組んだ「福知山市域における総合的な治水対策」事業が、出水期を前に、この5月でおおむね完成する。

 福知山では由良川堤防が決壊し、市街地に大きな被害をもたらした昭和28年(1953)の「28水」が、大きな目安として長く語り継がれてきた。ところが8月豪雨は、28水の279ミリを上回り、2日間で335ミリという観測史上最大の総雨量を記録した。1時間降水量としても、50ミリを3回計測。局地的で集中的な非常に激しい雨に、由良川へ注ぐ弘法川、法川があふれ、市街地の広範囲が茶色い濁流に覆われた。

 それまでから市内では、たびたび浸水被害が出て住民の不安が募っており、国(国土交通省近畿地方整備局福知山河川国道事務所)、府(中丹西土木事務所)、市の三者は、災害直後の同月29日に協議会を発足。連携して「総合的な治水対策」に取り組むことにした。計画を詰めて、翌年度に工事着手している。

■排水ポンプを増強 国交省■

 国は福知山城の下の法川排水機場(蛇ケ端)でポンプを増強。それまで1秒当たり12立方メートルだった排水能力を27立方メートルに増やした。

 下荒河の荒河排水機場でも3立方メートル強化して13立方メートルに。上荒河には弘法川排水機場を新設して9立方メートルの能力を持たせた。排水ポンプ車ピットも整備し、最大で11立方メートルの能力を持たせ、事業前の合計22立方メートルから、3倍近い60立方メートルに強化した。

■弘法川・法川改修 京都府■

 府は弘法川と法川で計2・2キロ区間の改修を進めている。JR線から由良川に向けては護岸工が完成。河川断面が広くなり、通水が良くなった。残る工事も、年度内に完成する計画。

 また国の荒河排水機場の隣に、府の新荒河排水機場を新設した。11立方メートルの排水能力を確保。周囲には荒河調節池を設け、20万立方メートルの貯水を可能にした。

■上流域で調整池整備 福知山市■

 市は、浸水により停止してしまった鋳物師町の厄除け神社裏手の和久市ポンプ場を耐水化。ポンプも1立方メートル増強して9・4立方メートルにした。

 また市街地上流にあたる西小谷ケ丘の福知山公立大学周辺で、桃池と草池を整備した。これまでは農業用ため池として貯水していたが、治水用の調整池に変更。いつもは水をためず空にしておき、大雨の際に最大で20万立方メートルの水をためる。ほかにも2つの池を整備し、貯水量は計22万立方メートル増えた。

 こうした事業がおおむね完成することで、8月豪雨規模での床上浸水被害は、ほぼ解消すると見られるものの、福知山河川国道事務所は「昨今の雨の降り方を見ると、施設規模を超えるような事象も想定し、住民の避難も同時に求められます」と注意を促す。その上で「2013年台風18号の洪水被害を契機に、緊急治水対策にも取り組んでいるところです。引き続き地域の安全安心のため、治水事業を推進して参ります」としている。
 
 
写真上=ポンプが増強された法川排水機場。左後方は福知山城
写真中=荒河排水機場(手前)に並び、府が新荒河排水機場を新設した。周囲には調節池を設けている
写真下=調整池として整備した桃池。右隣は公立大の学食

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