少年刑務所で実感、「心は育つ 人は変われる」 詩を指導する寮さん熱弁
2019年09月12日 のニュース

重犯罪者に絵本や詩。心は動くのか-奈良少年刑務所(奈良県奈良市)で、受刑者たちの心を育てる取り組みをしてきた作家の寮美千子さんを迎え、第65回福知山母親大会が京都府福知山市役所隣のハピネスふくちやまで8日にあった。
寮さんは、長年住んだ東京から奈良に移り住み、2007年から同刑務所で受刑者たちの社会性をじっくり育てる涵養プログラムの講師として、詩の教室を担当した。
刑務所にいる少年たちは強盗、殺人など重犯罪で収監されていて、最初は怖かったが、教室で接するうちに印象が変わったという。
「加害者になる前に、被害者になっている子が多い」。激しい貧困、虐待などの社会的弱者の境遇の子がいれば、社会的地位の高い家庭に育ちながら過剰な期待に押しつぶされた子も。「身近で愛してくれるはずの親と向き合えずに過ごし、心を閉ざし、喜怒哀楽を感じなくなる。こんな状態で『被害者の気持ちをわかれ』といってもわからない。心が育ってないから」と続けた。
涵養プログラムの講師を頼まれた時には「童謡や歌でそんなのできるわけないと思った」と振り返る。でも違った。
1回目の教室から変化を見ることができた。「心を閉ざし、人との交流が困難な少年たちが、みんなで絵本を読み、朗読劇をやった」。読み終えたときに心からの拍手を送ると、少年たちはきょとんとした表情に。「拍手をもらったことがない子たち。自己否定ばっかりだったところに自己肯定が生まれ、やり終えた達成感を持った。ここから変わりましたね」
最初は手を上げることをためらっていた少年たちが、われ先にと手を上げる。わずか1時間30分での変化。少年たちの心がどんどん育っていく様子をそばで見守った寮さんは、「生まれながらの悪人はいないと思っています」と力を込めた。
母親大会には92人が参加して寮さんの話に聴き入った。
写真=「心は育つ」と訴える寮さんの講演