にらみ利かす竜体鬼瓦 鬼博物館の青海波唐破風門

2024年01月01日 のニュース

 鬼伝説で知られる大江山の中腹にある日本の鬼の交流博物館(京都府福知山市大江町佛性寺)の玄関そばに、竜と雲、波の飾り瓦を施した「青海波唐破風門」が建つ。飾り瓦の竜は長い胴体を猛々しくうねらせ、鋭い眼光で門を潜り抜ける人たちににらみを利かす。

 青海波唐破風門は、竜などの飾り瓦を唐破風造りの屋根に取り付けた門で、この飾り瓦は神社の向拝や寺院の玄関などに施され、大分県内で多く見ることができるという。

 鬼博は旧大江町が1993年に、鬼に関する資料を展示、収蔵する施設として建てたが、玄関前の庭が何もなく殺風景だったため、青海波唐破風門の整備を計画。制作を鬼瓦製作者でつくる日本鬼師の会(事務局・福知山市役所大江支所内)に任せた。

 翌年、青海波唐破風の制作技法継承者で、同会の副会長だった故・生野盛さん=大分県=を中心に、会員たちが力を合わせて取り組んだ。

 門は高さ約4メートル、幅約7メートル。装飾部分の瓦は唐破風竜体1個、大波30個、小波31個、ウロコ丸30個など、全部で約140個のパーツからできていた。

 当時、旧大江町の職員で、日本鬼師の会の事務局長を務めていた新宮七郎さん(74)=同町南山東部=は、「(大勢の人に集まってもらい)今だったらできない取り組みで、鬼師のみなさんが大江山に足跡を残そうという思いを一つにして、素晴らしい門を作っていただきました」と当時を振り返る。

 門は近くにある大鬼瓦「平成の大鬼」とともに、鬼博のシンボルとなっていたが、降雪などの影響で、瓦が割れたり、ひびが入ったりして傷んできたため、市が2012年に日本鬼師の会に、飾り瓦の部分の再制作を依頼した。

■全国から鬼師集結■

 全国から再び鬼師約15人(延べ50人)が大江に集結。飾り瓦をすべて取り外したあと、制作に取り掛かった。三州(愛知県)産の粘土約870キロを使用。鬼博そばの鬼瓦工房で約3週間かけて飾り瓦を作り上げた。3回に分けて焼き、11月終わりに屋根に取り付けた。

 日本鬼師の会の現会長、菊地陽一郎さん(60)=愛媛県今治市=は再制作の際に参加した。最初の制作の時は父の故・壮三郎さんが携わったという。

 「飾り瓦作りは難しく、生野さんが手掛けた波などの形を変えないように注意して取り組みました。また瓦の中に雨が入り込まないようにするため、粘土で形作った作品は長い時間をかけて焼きました」と菊地さん。「それぞれの鬼師が持つ技術や知恵を集めて、納得のいくものに仕上げることができました」と話している。

 屋根の中央に据え付けた唐破風竜体鬼瓦は、以前と比べ竜の顔の向きが正面になり、顔立ちがより精悍になった。前の竜体鬼瓦などは廃棄せず、鬼博玄関横のスペースに展示している。

 鬼博では、たくさんの“鬼”たちに出会うことができる。門の上でにらみを利かす竜は観光客らを館内に導く「地獄の門番」のようにも見える。

 村上誠館長(64)は「竜は妖怪の一種で、鬼とかかわりが深い。門自体は博物館の展示品の一つにもなっていて、飾り瓦の竜は時空を超えて令和の時代に現れたようにも見えます。これからも多くの来館者を迎え入れ、時空をつなぐ存在であってほしい」と望んでいる。

 
写真(クリックで拡大)上から
 ・迫力のある唐破風竜体
 ・生野さんが中心となって手掛けた初代の唐破風竜体と村上館長
 ・波の装飾瓦を作る菊地さん
 ・鬼博の玄関先に建つ青海波唐破風門

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