37歳住職、農業に挑戦 醍醐寺で檀家が協力
2023年09月08日 のニュース
京都府福知山市猪崎、臨済宗南禅寺派醍醐寺の一常宗観住職(37)が、寺の前にある田んぼで、初めての米作りに取り組んだ。休耕田として長く手付かずだったが、檀家らに助けてもらい、四苦八苦しながら作業。現在は、稲刈りを済ませ、稲木にかけて天日干しをしている最中で、新米の味を楽しみにしている。
寺の前にある田んぼでは、檀家が米作りをしていたことがあったが、長く休耕田の期間が続いた。その期間中は檀家が草刈りや石拾いをして守ってきた。
一昨年10月に同寺住職に就いた一常住職は、寺の所有だと知ったその休耕田を「なんとかできないか」と思案。檀家で、荒廃農地防止に努めている猪崎農地保全会代表の衣川莞爾さん(76)に相談したところ、後押しを受け、檀家の的場一二さん(74)とともに米作りに協力してもらえることになった。
稲作は初めてで、苗植えと稲刈りの農業用機械を購入し、衣川さんと的場さんに田植えの仕方や水の管理などのアドバイスを受けてスタート。草刈りも続け、実りの秋を迎えた1反(10アール)の田んぼには、久しぶりに頭を垂れる黄金色のコシヒカリの稲穂が広がった。
3日に家族や別の檀家らも加わり、協力して稲刈り作業。一常住職は、初めて使うバインダーの操作に苦労しながらも、次々に稲を刈り取り、檀家らは鎌を使ってザクッザクッと音を立てて刈り取っていった。このあと、竹などを使って組み立てた稲木に稲をかけた。
食事の前に唱える禅門の言葉の一つに、「功の多少を計り、彼の来所を量る」というものがある。「この食べ物が多くの人々の苦労により作られ、今ここにあることを感謝します」という意味で、一常住職は「米作りを通して、そのことをより実感しています」と話し、「発見の連続でした。稲がたくましく育つので、その強さに感動しています。たいへん厳しい作業ですが、来年も続けたい」と意欲を見せている。
衣川さんは「休耕田が生き返った。住職は若いから、まだやれると思うので、これからも期待しています」と話している。
新米は自家消費するほか、米作りに協力してくれた檀家らに配るという。
写真(クリックで拡大)=苦労しながら稲刈りに汗を流す一常住職