大江山と鬼を研究して70余年 鬼博の村上名誉館長が本

2022年09月24日 のニュース

 鬼伝説の山・大江山中腹の京都府福知山市大江町佛性寺、日本の鬼の交流博物館名誉館長の村上政市さん(92)=同町河守清水=が、これまで執筆した大江山の鬼伝説についての論考をまとめた本「大江山の鬼と博物館」を出した。村上さんが自費出版本を出すのは初めて。息子3人が協力して編集などに取り組み、発行を後押しした。

■現地に足運び古老から聞き取り■

 政市さんは教職のかたわら、30代のころから郷土史について調べ始め、福知山市周辺のフィールドワークを続けた。中でも、地元の大江山や鬼伝説について熱心に研究。福知山高校校長を最後に教職を退いた後、1993年に開館した同博物館の初代館長に就任した。

 これまで政市さんが書いた寄稿文や随筆などは数多く、両丹日日新聞にも節分ごとに原稿を寄せたりしており、それらは次男の豊さん(60)=神戸市東灘区=の元に送っていた。

 書かれたものは、どれも読みやすく、示唆に富み、読者から好評。豊さんは後世に伝えていくべき-と、本にして発行することを思いついた。

 政市さんの了承を得たあと、同居する長男で現館長の誠さん(63)と、三男で綾部市の中筋小学校校長の稔さん(57)=大江町上野=にも声をかけ、編集や印刷所への連絡、装丁の構想、前書き、後書き執筆など、発行に向けての準備を進めた。

 本はA5判で448ページ。鬼に関する論考は、酒呑童子、麻呂子親王、日子坐王の3つの鬼退治伝説を中心に、深く掘り下げた研究成果がまとめられている。

 伝説そのものにスポットを当てるだけでなく、地域の寺社や事物、風習、伝承を調べ上げ、鬼との関わりを明らかにしようという姿勢を貫く。

 また鬼博の常設展示品の解説では、鬼に関する品々の魅力を、いろいろな方向から探り、その本質に迫っている。

 本は150部作り、親交がある人たちに配布するほか、駅南町の福島文進堂福知山駅南町店にも置き、1500円(税込み)で販売している。

 豊さんは、古里大江の郷土史にかかわる論考をまとめたものなど、あと2巻を出す計画を立てていて、再び兄弟で進めていく。

 本の後書きで、稔さんは「家にいる時でも、孫の相手をしている時以外は、ほとんど原稿用紙にペンを走らせていました。その姿は今も変わりません」と結んでいる。

 政市さんの論考について豊さんは「実際に現地に足を運んで、古老たちから話を聞き、まとめられたものが多く、分かりやすい。この機会に多くの人たちに読んでほしい」と願う。

 誠さんは「この本を記録として残すだけでなく、読んだ人が父の人柄や温かさを感じていただければありがたい」と語る。

 こうした息子たちの思いに、政市さんは「70年余りにわたって書き散らかしてきた拙稿をよくまとめてくれて本当にありがたい。これも長生きしたおかげと思い、これからも研究は続けていきたい」と話している。

 

写真上=政市さん(中央)と一緒に出来上がった本を見る誠さん(右)と豊さん
写真下=にこやかな鬼のイラストを表紙に載せた「大江山の鬼と博物館」

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