放流待つサケの仔魚 由良川環境保全のシンボルとして市民・団体が卵から飼育
2021年02月10日 のニュース

福知山、綾部など京都府北部4市を中心にした約250個人・団体が、由良川の環境保全のシンボルとなっているサケの卵を、愛情を込めて育てている。有志で組織する「由良川サケ環境保全実行委員会」が1月5日から配布したもので、すでにふ化して仔魚(しぎょ)になっているものが多いという。稚魚に成長したサケを3月に放流する予定。
サケは、生まれた古里の川に産卵のために回帰する習性があり、由良川では以前から府が、戻ってきたサケを捕獲、採卵し、放流する事業に取り組んできた。2008年度以降は実行委が引き継ぎ、由良川への環境意識を高め郷土愛を育んでほしいと、住民が自分たちで育てたサケの稚魚を由良川に放流して遡上させ、「サケの一生」を学べる取り組みを続けている。
今季の協力者は、小学校や公共施設、一般家庭などで、昨年より約30個人・団体多い。配った卵は人工授精を経て1カ月余り過ぎ、卵の中に黒い目が見える状態の「発眼卵」で全部で約8万9千粒。協力者がそれぞれが持ち帰り、直射日光が当たらない場所に置いた水槽の中に入れ、小さな命が生まれる様子を見守っている。
実行委は「配布するのは近年、多くが新潟県から取り寄せた移入卵ですが、今季は由良川支流の牧川での捕獲数が多く、半数近くを地場卵で確保できました。サケが戻るきれいな由良川を守るため、飼育先を500カ所以上に増やしたい」と話す。
福知山市内での放流イベントは昨年、新型コロナウイルスの影響で初めて中止され、同委員会関係者や飼育者が放流した。今年もイベントの開催は未定。

■稚魚へと成長する過程を公開 市児童科学館■
猪崎の三段池公園内の市児童科学館(桐村嘉郎館長)では1月5日から、1階の福知山広場に約200粒の卵を入れた水槽を置き、飼育している。すでにふ化し、日々成長している。
卵を水槽に入れてから、2週間後の19日にふ化を確認し、仔魚は現在、体長2センチ余りになっている。
仔魚の段階では、直射日光などの紫外線を嫌うため、段ボールの覆いを水槽にかぶせ、前側に観察時に開閉できるふたを付けている。
仔魚の腹には栄養分を持つ「さいのう」と呼ばれる朱色の袋があり、母親からもらった卵黄を養分にして育つ。さいのうを吸収するとスマートな姿になって泳ぎ出し、そこから餌を与え始める。放流するころには体長5センチほどの稚魚になるという。
同館では「由良川でくんできた淡水を水槽に入れ、汚れないように入れ替えながら育てています。放流まで元気に育つように世話を続けたい。稚魚へと成長する過程をぜひ見に来てください」と話している。
写真上=腹に袋がある仔魚
写真下=サケの卵を飼育する福知山広場の水槽