「還暦」迎え、増す重要性 国内初の重力式コンクリートダム・大野ダム

2021年01月04日 のニュース

 京都府南丹市美山町樫原にある大野ダム。一級河川・由良川の上流にあり、国内初の重力式コンクリートダムとして造られ60年、ことし「還暦」を迎える。洪水調節が最大の目的の施設で、近年、豪雨被害が増える中で下流域の福知山市などにとって、益々重要性が高まっている。

 大野ダムは、治水と水力発電を目的に、由良川改修計画の一環として、1957年に旧建設省が工事着手し、61年11月に完成。翌年4月に府に管理、運営が移管された。

■貯水湖の総貯水容量は京セラドーム23杯分■

 ダムの規模は、堤高が61・4メートル、堤頂長は305メートル。堤体積は16万7千立方メートル。貯水湖「虹の湖」の総貯水容量は2855万立方メートル(トン)で、最大で京セラドーム大阪約23杯分の水をためることができる。上部のクレストゲート(3門)、下部の放流管ゲート(同)から、貯水湖にたまった水を放つ。

 洪水調節は、大雨が降り洪水が起きそうな時、上流から入ってきた水をダムにため、流入量より少ない量の水を放流して下流域の河川水位の上昇を抑制。氾濫を防いでいく。

 流入量がこれまで一番多かったのは72年9月17日の台風20号の時で、毎秒1989トンの水が入り、1189トンを放流した。ダムの貯水位が一番高くなったのは2013年9月15日の台風18号発生時の175・37メートルで、定めている洪水時最高水位(175メートル)を少し超えた。

■大雨の頻度高まり、年1回のペースに■

 ダムへの流入量が毎秒500トン以上になり、洪水調節をしたのは1965年(昭和40年)から08年(平成20年)までの44年間では計14回だった。これは3年に1回の割合だが、09年から18年までの10年間では10回を数え、年に1回のペースとなっている。大雨の頻度が、近年は急速に高まっていることが分かる。

 大野ダムの洪水調節は1953年(昭和28年)9月の台風13号による出水「28水」(おおむね100年に1回程度の洪水)を対象に計画。毎秒2400トンの流入があった場合、1400トンを放流すると、ダムから42キロ下流の福知山市内(音無瀬橋付近)での河川流量は5600トンに。もし大野ダムが無いと、流量は6500トンとなり、洪水が発生する確率が高くなるという。

 ダムからの放流が下流域に達するまでの時間は27キロ先の綾部市まで約2~3時間、福知山市までは約3・5~5時間かかるが、洪水時には水位の上昇が早くなる可能性がある。

 異常な大雨や長く洪水が続いて、大量の水がダムに流れ込み、貯水位が上がって、これ以上水をためることができない時は、緊急放流(異常洪水時防災操作)をする。この場合、上流からダムに入ってくる量と同じ量の水を流す。2013年9月の台風18号では、初の緊急放流を行った。

■「事前放流」の運用を計画■

 大雨が予想される際に、ダムの水位を前もって下げておくため、昨年8月から、最低水位の標高を155メートルから153メートルに下げての事前放流の運用を始めた。10月には目標の150メートルの設定で、放流実験を実施した。下流域で川の水位上昇やにごりの有無がないかどうかを調査。問題がなければ今年の出水期から150メートルの設定での運用を始める。

 ダムからの放流量を増やす場合は、下流域に放流警報の放送を流すほか、大野ダムのホームページでも知らせる。

■職員15人が勤務し、日ごろの点検怠らず■

 ダムのそばには、府大野ダム総合管理事務所があり、職員15人が勤務。操作室から遠隔操作でゲートの開閉をする。大雨が降った時は24時間態勢で2~4人の職員が詰める。緊急時は時間外でも全員が出勤し、対応に当たる。

 万が一の時にゲートが動かなくなったり、下流域に放流の情報発信ができなくなったりすることの無いよう、日ごろから機械の点検を怠らない。ほぼ毎日、ダム周辺の巡視も続けている。

 貯水湖に流れ込んできた流木の処理にも当たらなければならない。池には流木止めの「網場」があるが、ゲート付近に流木がいかないように、ボートや重機を使い引き揚げる。

 このほか管理事務所では、13年度から供用されている京丹波町下山の畑川ダムも管理、運営していて、大雨の際は現地の管理所に行き、対応する。

 大野ダムには発電所もあり、水力発電で電気を作っていて、売電している。

 ダム管理事務所の井尻博之所長は「大野ダムは由良川の治水のために造られ、下流域に対して十分な効果があると思いますが、ダムにも限界があるため、絶対に安全だという過信はせず、緊急放流などの情報が流れれば、早めの避難をしてほしい」と話している。
 
 
写真は上から順に
写真1=大野ダム。上部のクレストゲートからの放流の様子
写真2=普段からクレストゲートの動作確認などの点検を怠らない
写真3=2013年の台風18号の洪水時は、貯水湖の満水近くまで水をためた
写真4=管理事務所の操作室。遠隔でゲートの操作をする

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