夜久野で国内最古級の後期旧石器700点出土 広範囲移動か、隠岐産黒曜石も

2020年11月27日 のニュース

 京都府埋蔵文化財調査研究センターは26日、福知山市夜久野町井田で発掘調査を進めていた稚児野遺跡で、石器群が見つかったと発表した。国道9号付近の約3300平方メートルの台地から、時代を裏付ける指標となるナイフ形石器など、後期旧石器時代の約700点が出土し、約3万6千年前の遺跡と推測できる。これは府内では京丹後市の上野遺跡と並ぶ最古、国内でも最古級という。

 稚児野遺跡は、牧川と畑川に挟まれた標高104メートルに位置する。1981年に行った初めての発掘調査では、平安時代の遺跡と確認されていた。

 ところが、国道9号の夜久野トンネルのオープンカット工事に伴い、昨年6月から約3300平方メートルを対象に本格的な調査を進めたところ、約3万年前、鹿児島湾にある姶良カルデラの噴火で飛来して形成された火山灰層の下から、相次いで石器が見つかった。

 調査区域内には、石器がまとまって出土する直径7メートルから10メートルほどの集中部が9カ所ほど見られた。多くの集中部から作業台に使われたと思われる台石やたたき石が確認され、一帯に作業時に出たと思われる石片が散らばっていた。石器の加工場として機能していた可能性があるという。

 出土品の中からは、狩猟のための槍先に使った「ナイフ形石器」、動物の皮なめしなどに使った「掻器」、物を削る際の「削器」、刃の部分を磨いた「石斧」など、合わせて10点が原形をとどめた状態で見つかった。

 他の石片も含め、石材にはチャートや頁岩のほか、遠く離れた島根県隠岐諸島産の黒曜石、奈良県と大阪府の境にある二上山周辺から運ばれたと思われるサヌカイトも使われていた。

 後期旧石器時代は、日本に人類が初めて渡来したころも含まれ、当時の遺跡は日本最古といわれる。とくに関東地方で多く発見されているが、府内では京丹後市の上野遺跡に次ぎ、稚児野遺跡が2例目。

 埋文センターの中川和哉参事と黒坪一樹調査官は「遺跡の規模が大きく、出土数も多い。旧石器人は季節に応じて移動しながら暮らしていたといわれ、ここで狩猟道具を作りながら、(今でいう)キャンプ生活をしていたと考えられます。遠方の石材も一部に使われており、旧石器人が広範囲に行き来していた証拠となり、貴重な成果です。今後、範囲を拡大して調査を進め、他の日本海側の遺跡群との関連についても調べたい」と話している。

■化石・郷土資料館で出土品の一部展示■

 新型コロナウイルスの感染拡大予防のため現地説明会はしないが、出土品の一部を28日、29日、12月5日、6日に夜久野町平野の道の駅、農匠の郷内の夜久野町化石・郷土資料館に展示する。開館は午後1時から同5時(入館は午後4時30分)まで。入館料は大人110円、中学生以下無料。
 
 
写真上=約3万6000年前の石器が出土した稚児野遺跡
写真下=時代を裏付けるナイフ形石器などが出土した

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