テニスコート増設予定地から鉄製矢じり32本出土 三段池公園

2020年06月01日 のニュース

 京都府福知山市は、猪崎の三段池公園内で池ノ谷1号墳発掘調査を行い、木棺直葬墓2基を確認した。このうちの1基は6世紀中ごろのものとみられ、鉄鏃(てつぞく)と呼ばれる鉄製の矢じり32本がまとまって見つかるなど、周辺にはない特徴があり、かなりの実力を持った人物の墓だと推測している。

 市は公園内テニスコートの増設を計画していて、8基の古墳がある池ノ谷古墳群の一部を削ることにしている。そのため、貴重な資料を記録しようと、2月から発掘調査をしてきた。

 1号墳はテニスコート西側の丘陵にある直径約22メートル、高さ1・5メートルの円墳。埴輪(はにわ)や周溝といった外側の施設はないものの、池ノ谷古墳群の中では最大規模で、中心的な存在になる。

 工事範囲の関係で3分の2程度の調査となったが、2つの埋葬跡が見つかった。土に残る痕跡などから、いずれも木製の棺が使われたと考えられる。

 最初に見つかった墓は、棺の長さが290センチ以上で、幅は48センチ。長さ約65センチの鉄刀1本、小型ナイフにあたる約10センチの刀子(とうす)、2つの束になった鉄鏃32本が出土した。出土品や周辺の状況から6世紀中ごろに埋葬されたとみられる。

 調査を担当した市文化財保護係の学芸員、松本学博さんは「当時は鉄製品が一般的ではない時代。これだけの量が出土したことから、埋葬されたのは地域の指導者的な存在だったのではないか」と話す。

 また、鉄鏃は長頸鏃(ちょうけいぞく)と呼ばれる、飛距離を重視した形状で、30本以上まとまって出土することは三段池周辺では珍しいという。今後調査を進める予定で、当時の鉄製品について知る貴重な資料になるという。

 もう片方の墓は、長さ270センチ、幅73センチの棺があったと考えられ、縄文時代以降に宗教的行事などで用いられた赤色の顔料の痕跡が残っており、約7センチの刀子1本が見つかった。埋葬時期は不明だが、最初に埋葬された人物に近しい存在の人を、後から葬った跡とみられる。

 松本さんは「三段池には8つの古墳群が確認されています。今回の円墳も他の古墳群と並行して築造されており、周辺の造墓集団やその勢力などを考えるうえで貴重な資料になります」という。

 新型コロナウイルスの影響で一般向けの現地説明会は実施しないが、出土品を詳しく調べ、その成果とともに公開する予定にしている。
 
 
写真=出土品の説明をする松本さん

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