「文化財支える伝統の名匠」選定保存技術に丹波漆
2024年07月20日 のニュース
京都府福知山市夜久野町で活動するNPO法人丹波漆(高橋治子理事長)が、日本の文化財を保護していく上で重要な団体だと、国から認められることになった。国の文化審議会が19日、「選定保存技術」保存団体について文部科学大臣に答申。丹波漆が追加認定に含まれた。
選定保存技術の保持者・団体は「文化財を支える伝統の名匠」とされる。今回は丹波漆のほか琉球瓦葺技術保存会、一般社団法人日本茅葺き文化協会などが答申に含まれた。認定後の選定保存技術は89件で、保持者は67人、40団体になる。丹波漆が認定されたのは「日本産漆生産・精製」について。
日本産の漆は漆芸の制作に加え、建造物や美術工芸品などの修理に欠かせない。ところが国産漆は全国でわずかしか採取されておらず、夜久野は希少な生産地となっている。
夜久野の漆を守っているのがNPO法人丹波漆。戦後間もない昭和23年(1948)に漆を採取する漆掻き職人の衣川光治さんが設立した丹波漆生産組合を前身としている。
江戸時代には日本各地で漆の生産が奨励され、中でも夜久野産の漆は良質だとして明治時代の文献にも残る。
ところが明治以降は外国から安価な漆が入ってくるようになり、戦後は化学製品の普及もあって、漆掻きが産業として成り立たなくなった。全国で採取技術を持つ職人が減り、漆の木も減少。夜久野では生産組合が技術の伝承に努めることで、いまに伝わってきた。平成3年(1991)に、府無形文化財に指定されている。
技術の伝承だけでなく、漆の木の植栽活動にも励み、平成21年(2009)には、手掛ける夜久野丹波漆林が文化庁の「ふるさと文化財の森」に認定。後進の指導と育成に力を入れていることも評価された。
高橋理事長は「衣川さんをはじめ、これまで携わってこられた人たちの努力があってのことです」と感謝し、副理事長の小野田さやかさん、山内耕祐さんも「認定は励みになる」と喜ぶ。そろって「これを機に多くの方に夜久野の漆を知っていただきたい」と話している。
写真(クリックで拡大)
・夜久野高原の植栽地で漆を採取する山内さん。技術を守り伝えるために漆木の植栽にも励んでいる
・選定保存技術保存団体認定の知らせを受け、「地元のみなさんに興味を持ってほしい」と話す高橋理事長(中)、小野田さん(左)、山内さん