アカミミガメが野生化し増殖、生態系に影響
2024年07月16日 のニュース
全国各地に定着するアカミミガメ。ミドリガメの愛称で親しまれ、その可愛らしい見た目からペットとして飼われていたが、捨てられることが多く、野生化した。日本の生態系に深刻な影響を与えるようになり、昨年6月に「条件付特定外来生物」に指定され、規制の対象となった。専門家に防除活動のポイントなどを聞いた。
聞いたのは西堀智子さん。「ノロマと侮ることなかれ!-アカミミガメが条件付特定外来生物になったわけ-」をテーマに京都府内各地で講義を行う一般社団法人淡水生態研究所=長岡京市=の理事であり、大阪府堺市を拠点に活動する和亀保護の会で代表を務める。
西堀さんによると、アカミミガメの原産地はアメリカ合衆国南部からメキシコで、日本では1960年代に、チョコレート菓子の懸賞として輸入され、ペットして人気を集めたが、70年代にカメが保有するサルモネラ菌から食中毒が引き起こされる騒動が多発し、野外に捨てられるようになった。
だが、以降も輸入は続き、ペットが野生化。特に関西地域では、アカミミガメが好むため池などの止水環境が多いことから、爆発的に繁殖しているという。特徴は、頭の横のところ、人間でいう耳にあたる位置に赤いラインがある。
在来のニホンイシガメよりも大きくなり、食欲旺盛で気が荒く侵略的。産卵回数も、一回の産卵数も多い。原産地ではアライグマ、ワニなどの天敵がいて、生態系のバランスが保たれているが、日本には天敵がいないこと、国内の環境条件からオスよりもメスが多いことを背景に、どんどん増えていっているという。
レンコンやヒシの芽を食べるなど農産物への食害が報告されていて、近年では稲作への被害も確認されている。水草も盛んに食べるので、淡水魚の稚魚や水生昆虫の生活場所を奪ってしまう。そんな状況のなか、昨年6月に条件付特定外来生物に指定された。
そもそも、特定外来生物とは、外来生物法に基づき輸入、放出、飼育、譲渡などが禁止されるもので、厳しく規制されている。日本では2005年に初めて外来生物法が施行された。
その当時、アカミミガメの指定も検討されたが、「いきなり、規制を厳しくしてしまうと、子どもたちが一気に捨ててしまう可能性があり、見送られた。その後、飼育を可能にするための法整備に実に18年もかかった」と、西堀さんはこれまでの経緯を語る。
今回、「条件付き」となったことで、アカミミガメは野外への放流、販売、購入は法律で禁止されるが、捕獲、飼育などは今まで通り手続きなしでできる。
■地域づくりの一環で楽しんで防除を■
防除活動の先進事例として、西堀さんは兵庫県加古川市の寺田池での取り組みを紹介する。2006年から08年まで工事のため、水を抜いたとき、おびただしい数のアカミミガメを確認。「大変な状況だと思いました」と西堀さん。それから、東播磨県民局の協力を得て、地元のため池協議会、水利組合、学校などを巻き込み、日光浴するカメの習性を活用したわなを設置したり、学習会を開いたりするなどさまざまな取り組みを展開した。
活動が実り、16年ごろから水草やハスが増え、19年にはレンコン掘りができるような状態にまでなった。ただこれをゴールとはせず、「良い環境になったということは、アカミミガメも増える環境だということで、駆除活動は場合によっては半永久的にやっていかないといけない。大切なことは地域づくりの一環として、行政と住民の両輪が楽しく続けられる工夫が必要」と助言する。
■地域と連携した活動 京都府が講習会■
外来生物対策として京都府は、地域と連携した防除活動を推進するため、昨年11月と今年3月、福知山市猪崎の三段池公園で、西堀さんらを講師に招いた講習会を実施。近隣自治体の職員や関係者を対象に講義のほか、捕獲わなの設置実習などを行った。
京都府自然環境保全課は「被害が拡大する前に早めの発見、対処が重要です。池でたくさんのカメが日光浴していると注意が必要なサインです。外来生物対策に取り組む市町村や団体を支援していますので、関心があれば相談してください」と呼びかけている。
写真(クリックで拡大)
・条件付特定外来生物のアカミミガメ
・防除活動に取り組む西堀さん(左)
・三段池に捕獲わなを設置した
・加古川市に設置された日光浴わな
・三段池公園で開かれた講習会