獣害対策の行政頼りを脱却 川合で住民が主体になり成果
2024年02月09日 のニュース
ニホンザルの群れが住み着き、農作物の被害に悩む福知山市三和町の川合地区。川合地域農場づくり協議会(土佐祐司代表)を中心に、住民主体の対策に取り組んでいる。ICT(情報通信技術)の活用など、あの手この手の努力が評価され、国の今年度鳥獣対策優良活動表彰で、最高賞の農林水産大臣賞を受けることが決まった。
川合地区で、サルの群れによる被害が始まったのは2003年ごろ。当初は「鳥獣対策は、行政がするもの」という考え方が根強く、取り組みが進まなかった。
そんな状況を打開するため、「行政頼りでは駄目。自分たちの手で集落を守ろう」と、土佐代表(70)ら協議会メンバーが立ち上がり、12年にサル用の電柵をほ場に設置した。
■増えすぎたサル 民家を物色■
しかし、防除のみでは抜本的な解決とはならず、群れの頭数は年々増加。民家の中に入り込んで食べ物を物色するなど、被害はより悪質になり、19年からはロケット花火での追い払い、檻の設置による捕獲にも着手するようになった。
これで「防除」「追い払い」「捕獲」の3本柱が確立され、複合的な態勢づくりが整った。さらに現在は、捕獲した雌に発信機を装着し、受信機を取り付けた軽トラックで巡回することで群れの位置を把握している。
この情報は、住民ら約50人によるLINEグループで共有する。群れの近くで追い払いの花火を打ったり、サルの行動経路をデジタル地図上で可視化させ、次の行動を予測し、捕獲に役立てたりして成果を生む。
対策の手は緩めない。最近では、旧川合小学校を活用したキャンプ場の管理者と連携し、利用客を対象にした放置柿のもぎ取りイベントを実施。人気のプログラムになっていて、サルを人里近くに引き寄せない抑止力の一つとなっている。
■隣接市町とも連携 共存可能な数にまで減少■
これらの対策により、多いときで50匹を超えていた群れを、共存が可能な30匹近くにまで減らすことに成功し、農作物の被害軽減にもつながった。サルの行動範囲をにらんだ広域的な対応検討のため、福知山市とともに、隣接する綾部市と京丹波町とで連絡会議を設置し、年2回の会合などで情報共有も図っている。
対策への思いや受賞について、土佐代表は「猿の被害が原因で、川合を住めない地区にせず、住み続けられるところに、という気持ちで対策を進めてきました。住民や行政の協力があって取り組めており、感謝しています。地区ぐるみの活動が評価されてうれしい」と喜んでいる。
■表彰式は15日 東京の農水省で■
表彰は、鳥獣被害防止などに取り組み、地域に貢献する個人、団体をたたえるもので、2009年から実施。これまで府内の受賞歴はなく、今回が初めてとなる。
表彰式は、東京都の農林水産省本館で15日に開催される。同協議会を含む農水大臣賞の2団体、農村振興局長賞の4団体、2個人が表彰を受け、土佐代表らが事例発表をする。
写真(クリックで拡大)=受信機で猿の群れの位置を把握