統一選を前に:地域の担い手不足

2023年03月28日 のニュース

 統一地方選に寄せて、京都府福知山市の課題を取材した。最後は「地域の担い手」確保について。人口減少や生活様式・社会情勢の変化で、地域の世話役をできる人がいなくなってきた。

 福知山市が住民基本台帳をもとに算出する1月末の人口は7万5948人で、10年前と比べ5593人減少した。このまま何も対策をしなければ、2040年までに7万人を下回ると市は見ている。人口が減り続ける中、各地域では自治会組織の担い手確保、住民活動の維持などで、いろいろな課題に直面している。

 人口の内訳は、旧市が6万6045人、旧3町の夜久野2975人、三和3015人、大江3913人。10年前と比較した人口減少率は、旧市は3・8%減、夜久野が25・6%減、三和が22%減、大江も22%減となった。

 地区ごとにみても、人口が減っているところがほとんどで、世帯数が一桁となった場所も全域にある。5世帯9人が生活する三和町田ノ谷地区では、60代~90代の住民が自治会や地域組織の役員、神社当番など1人で3役、4役と引き受け、近隣自治会と交代で民生児童委員を選出するなどして「担い手」をやり繰りする。

 地区活動は、出身者が帰って手伝ってくれるため、何とか維持出来ているが、自治会の岩見義隆会長(71)は「側溝の掃除、樹木の伐採など、高齢化で手作業は難しく、必要な機材を借りることがあります。自治会の財源だけで対処していくのは厳しく、事情を考慮した支援があれば」という。

 人口減少が緩やかな地区でも課題がある。旧市の観音寺地区はこの10年間の人口は600人台を維持し続けているが、自治会、防災会、農区などを組織しており、自主防災会の小滝篤夫会長(74)は「3年ほど前から担い手が不足し、『役がありすぎて負担になる』という声が上がるようになりました」と話す。

 原因は、定年の引き上げ、年金支給額の引き下げなどで、高齢になっても、働く人が増えたことだという。以前なら、退職して地区運営を担ってきた世代が、仕事のために地区の役に就くことが難しくなっている。

 小滝会長は「防災会は女性も参加しやすくするなど、役員の選出方法の見直しを進めています。若い人が住みやすい環境を整えるなどし、自治会組織を担える人が増えるような取り組みも必要だと思う」と話す。

 農村地域では農業の担い手も必要だ。市農業委員会の藤田重行会長(73)は「20年ほど前から、人手不足と耕作放棄地増加は言われ続けています。米の需要が減少しており、より収益性の高い作物の栽培での所得確保、農地の集積化など、農業をしやすい環境づくりが必要です」という。

 中六人部地域農業活性化協議会の井上淳一会長(53)は「地域内の遊休農地と就農希望者をつなぐ農地バンクに取り組み、大規模農業がしやすくなるほ場整備などを計画し、就農しやすい環境を整えつつあります」と自分たちの取り組みを説明した上で、公的支援として「移住を考える人らに、農業に関心を持ってもらえるような情報発信、支援が充実すれば、担い手不足の解消にもつながるのでは」と考えている。

 暮らしの基礎となる地区を守るため、課題に合わせた政策が望まれる。

 

写真=三和町田ノ谷では神社当番など人をやりくりして祭りを続けている

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