2代、70年営業の美容室閉店 過疎化進む佐賀で貴重な“憩いの場”
2021年11月08日 のニュース

過疎化が進む京都府福知山市佐賀地区の美容室「上原美容室」=私市=が、このほど閉店した。開店から約70年。利用客がおしゃべりを楽しむ地域の憩いの場だっただけに、惜しむ声が相次ぐ。体調を崩し閉店を決めた店主の中西ふさ子さん(73)は、「お客さんにはとても感謝しています」と話す。
中西さんの母・上原マサエさんが1950年代に開店。「マーちゃん」と親しまれ、当時から通う常連客は「髪のこともそうですが、着付けは一品。しんどくならないんです」というほどで、花嫁に付き添って出掛けた結婚式場の従業員からは、美容師ではなく“着付けの先生”と思われていたという。昨年12月に97歳で亡くなった。
後を継いだふさ子さんは、神戸市の美容学校を卒業してから大阪市の美容室で修業を積み、20歳のときに美容師免許を取得。74年ごろから、実家の美容室を手伝うようになった。

大みそかは夜遅くまでにぎわい、成人式の日には午前2時ごろから、15人ほどの髪や着付けを仕上げた時期もあったという。経験は豊富だが、ふさ子さんは「母も『着付けで良くできたと思った人は一人もいない』と言っていたように、私も髪を完璧に仕上げられたと思うお客さんは一人もいません。ただ、また来てくれるということは満足していただけたのかな」と遠慮がちにいう。
60年ほど通ったという塩見鈴栄さん(85)、荒賀娃子さん(74)は、「かしこまらなくていいし、心が休まります。ふさ子さんはおしゃべり上手で、ここに来てしゃべったら心がスーとして帰ることができます。寂しいですが仕方がないです」と、閉店を惜しんでいた。
2013年9月の台風18号で店舗は床上浸水し、閉店しようとしたが、マサエさんが拒み、1カ月以内に再開したこともある。
ふさ子さんは「お客さんは十人十色。様々な人間模様を見させてもらいました。人生にとってためになることも聞かせてもらい、心のノートにたくさん書き留めてあります。お客さんの元気を分けてもらえました。母も喜んでいると思います」と感謝している。
写真上=「お客さんに感謝」と話す中西さん
写真下=髪を切ってもらったことがある子どもから花束を贈られた