秋祭り中止で伝承に不安 新型コロナ禍、絆確かめる地域行事に影
2020年10月02日 のニュース

新型コロナウイルスの影響で、京都府福知山市内の秋祭りは、感染防止対策のため、神輿巡行や太鼓、舞などの奉納を見送り、神事のみを行うところが多い。古里に活気を呼び込む祭りばやしや地域住民のにぎやかな掛け声が響かないこの秋。伝統行事の伝承を心配する声も上がっている。(駿河彰宏記者)
京都府神社庁の副庁長を務める三和町大原、大原神社の林秀俊宮司(64)らによると、神社の祭りは8割が農業に関わるもので、福知山市など府北部地域では、収穫を感謝して10月に行われるところが多い。
市内では、府の無形民俗文化財に登録されている牧の「練り込み太鼓」や三和町大身の「ヤンゴ踊」、つくりもんを展示する夜久野町の「額田のダシ行事」など、各地域に伝わる民俗芸能が祭りで奉納されているが、今年はいずれも中止し、氏神の神社で神事のみを執り行うことに決めている。
■出身者らとの交流も見送る■
市北部に位置し、今春に2自治会が統合した天座区(中村典之区長、約130人)では、神輿巡行のルートを隔年で変え、最長で3キロを超える距離を約30人で運んでいる。ところが、昨年、一昨年と悪天候のため、地域を練り歩くことができていない。
今年こそはと期待したが、新型コロナの影響でやむなく中止を決断。中村区長(64)は「区民は楽しみにしていたが、秋祭りの威勢の良い掛け声が地区に響かない。3年続けての中止は残念」と肩を落とす。
神輿巡行のあとには、天座会館横の広場で区民たちが集まり、飲食をする「祭りの夕べ」を行うのが通例。地区出身者らとの交流の場にもなっていて、楽しみのひとつだが、これも取りやめた。
地域に伝わるしきたりなどを伝承することへの不安も広がっている。毎年していた神輿の組み立ては3年間していない。「毎回写真を見て、『どやったかいな』と言いながら組み立ててきたから、来年は少し不安」と漏らす。
■担い手不足に拍車、模索続く■
少子高齢化による担い手不足は地域行事の慢性的な課題だ。同区には、上野条にある御勝八幡宮の25年に一度だけの大祭で奉納する烏とびやビンザサラと呼ぶ田楽が古くから伝わっていて、府の無形民俗文化財に登録されている。
中村区長は「地元の人だけでは足りず、出身者に帰ってきてもらっている。神輿は他地域の人に助けてもらうこともできるが、田楽はさすがにそうはいかない」と頭を抱える。
こういったことに加え、新型コロナの影響で伝承への不安は増し、新しい活動様式を検討するなど模索している。
林宮司は「祭りは村の横のつながりができ、絆を確かめられる地域の重要な行事」と強調する。
三和町や上六人部などの31社で、秋祭りの神事をする林宮司は「大勢が集まることはできないが、新型コロナの終息を願って祝詞をあげるので、氏子のみなさんも手を合わせて祈ってほしい」という。「コロナが収まったあかつきには、ぜひにぎやかな祭りを」
写真=天座に伝わる田楽のビンザサラ(2015年の御勝大祭で)