100年先に伝えたい伝統の技 夜久野で漆掻き

2020年06月16日 のニュース

国宝修繕に丹波漆を

 全国でも希少な漆の採取地、福知山市夜久野町で、漆を取る漆掻きが15日に始まった。京都府無形文化財「丹波の漆掻き」技術を守り伝えているNPO法人丹波漆は、いよいよ今年、国宝・重文修繕に丹波漆が採用されるよう、本格的なプロモーションを始める。

 今年採取するのは、NPOで植栽したものと、山に自生しているものを合わせて9本。このうち一番大きな樹齢30年と見られる木が2本、夜久野高原にある。木の高い所まで作業できるよう、事前に足場の櫓を組んで、シーズンを迎えた。

 NPOの岡本嘉明理事長(75)、6年目で主力となっている山内耕祐さん(32)、夜久野に移住してきて今年が初めての漆掻きとなる齊藤善之さん(43)の3人が、「けがの無いように」と山に日本酒と菓子を供え、静かに手を合わせてから作業を始めた。

 漆の木の樹皮を専用の鎌で等間隔に削り、同じく専用のかんなで小さな傷を付ける。これが初日。以降、日を置いて傷の本数と幅を増やしていき、にじみ出てくる漆の原液を、小さなヘラで大事に、大事に掻き集める。

 昨年採取したのは町全域で計3・4キロ。今年も9月末までのシーズン中に3キロ前後を見込む。

 かつての採取量は年間で牛乳瓶1本、2本。西日本で唯一残った採取地を絶やさないことで精いっぱいだった。任意団体をNPOに改め、植栽を進め、今はキロ単位で語れるようになった。

 植栽地は国宝などの文化財建造物の保存・修繕に必要な資材を供給する、文化庁の「ふるさと文化財の森」にも指定された。獣害に悩まされて思うように増産が進まず、「産地」と呼べるまでには、まだ10倍の規模がいる。それでも、安定してキロ単位の出荷ができるようになった意義は大きい。

 NPOは今年採取するものは、地元の漆文化振興に使うほか、今年初めて、文化庁関係の作業に使ってもらえるようにと考えている。岡本理事長は「国をはじめ、各行政機関にご支援をいただいてきましたが、ようやく恩返しできます。100年、200年先の人にも喜んでもらえる、よい漆を採取していきたい」と話している。

写真=夜久野高原で漆掻きの作業が始まった

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