厳冬期に良質の和紙作り 大江丹後二俣、かじかむ手で「寒漉き」
2020年01月17日 のニュース
京都府指定無形文化財の手漉き和紙技術を伝え守る、福知山市大江町二俣一の田中製紙工業所で、この時期ならではの「寒漉(かんず)き」作業が進められている。身を切るような冷たさの中、1枚ずつ丁寧に仕上げている。
冬の厳寒期は水の中で雑菌が繁殖しにくいことに加え、原料のコウゾの繊維を分散させる役目がある植物・トロロアオイの粘液の粘りが長持ちし、目が細かい良質の和紙ができるという。
江戸時代から丹後和紙(丹後二俣紙)の製造を続ける田中製紙で紙漉きをするのは、5代目の田中敏弘さん(58)。新年4日から寒漉きの作業を始めた。
冷たい井戸水を張った水槽・漉きぶねの中に、コウゾの繊維とトロロアオイの粘液を入れて、台にすだれを乗せた道具・簾桁(すげた)に液を流し入れて漉く。
今は提灯(ちょうちん)に張る和紙を製造している。提灯用は、通常の和紙より厚みをもたせるため、簾桁を上下左右にゆっくりと動かし、時間をかけて仕上げていく。
今冬は暖冬傾向で、比較的暖かい日が続くが、井戸水は冷たく、かじかむ手を時折、湯で温めながら作業を進める。
田中さんは「1枚の和紙を仕上げる作業時間が長いので、疲れが出ないよう余分な力を抜きながら漉いています」と話す。寒漉きは3月上旬まで続く。
写真=ちょうちん用の和紙を漉く田中さん