大江山からの寒風で乾燥、良質の和紙に期待 コウゾの天日干し作業始まる
2025年01月29日 のニュース
和紙の原料となるクワ科の植物、コウゾの天日干しが、京都府福知山市大江町二俣一の田中製紙工業所で始まっている。稲木に掛けられたコウゾの束が寒風にさらされている。
町内では二俣の大江山周辺で、昔から手漉き和紙「丹後和紙(丹後二俣紙)」の生産が盛んに行われてきたが、洋紙の普及などで需要が少なくなり、作り手も減少。今では田中製紙1軒だけが伝統の技術を守り続けている。
田中製紙では、コウゾの栽培、和紙の原料作り、手漉きまで、和紙作りの全工程を行っている。コウゾは、町内の2カ所の畑で育てていて、今期は約3・5トンが取れたという。
和紙作りに使うのはコウゾの皮の内側の繊維部分で、幹を約1・2メートルの長さに切りそろえ、木製の桶の中で蒸して、はいだ皮の部分を稲木に掛けて乾燥させる。
稲木を使っての天日干しは2022年以来3年ぶり。稲木立てに労力がいるため、2年間は三脚を使って干した。今回は丹後二俣紙保存会の会員らが手助けして2基を立て、25日から干し始めた。
田中製紙5代目の田中敏弘さん(63)と家族で作業。稲木は4段で高さ約5メートルあり、束になったコウゾを順番に並べる。高い場所に掛ける際は、田中さんがはしごで上り、下にいる家族が投げる束をうまくキャッチして干していく。
乾燥するまでには約2週間かかる。作業は3月初めごろまで続く。
「乾燥には大江山からの吹き下ろしの風と適度な照りが必要ですが、朝晩は寒く、昼間は晴れ間のある日が多く、安心して和紙作りができそうです」と田中さん。「保存会や福知山公立大学、地域のみなさんの協力があり、スムーズに和紙作りが進んでいて、大変ありがたい」と話している。
写真(クリックで拡大)=家族が投げるコウゾの束を受け取る田中さん(1月26日)