水害で流れ着いた種、散水栓枠のすき間から芽を出し大きく育つ
2019年09月27日 のニュース
京都府福知山市厚東町、瀬川健一さん(64)宅前にある、散水栓の小さな枠。隙間から謎の樹木が生えてきた。5年前の8月豪雨水害で流されてきた種が発芽したとみられ、いまでは樹高約2メートルにまで達し、家のシンボルになっている。
瀬川さん宅は、カフェ「もえぎ」の店舗兼住宅になっており、8月豪雨水害で、1階の店舗部分が床上50センチの浸水被害を受けた。ようやく修繕などもひと段落した2015年の春、散水栓の横から植物が生えているのを見つけた。
美しい緑の葉をつけており、「抜くのもかわいそうだ」と思い、そのままにしていたところ、どんどん成長。幹回りも太くなり、現在は15センチほどあり、丈夫な葉がたくさんついている。
瀬川さんは「水も肥料も与えていないし、猛暑にも降雪にも負けず、伸びのびと育ったこの木に、元気と勇気をもらっています。幹が散水栓すれすれまで迫っていますが、出来るだけ切らずに見守り、状況によっては対策を考えていきたい」という。
■モチノキ科のタラヨウと判明■
市植物園によると、この木は「タラヨウ」とみられる。モチノキ科モチノキ属の常緑高木で、庭木や公園樹として植樹され、寺社にもよく植えられている。葉の裏を傷つけると黒く変色する性質を利用し、字を書いて通信手段に使ったことから、別名「ハガキノキ」とも呼ばれる。
樹木の名称を知った瀬川さんは「名前が分かったので、名札をつけてあげようかな」と笑顔。「近くを通られた際には、このど根性の木を、ぜひ見に来てください」と話している。
写真上=大きく育った木
写真下=散水栓横のわずかな隙間から伸びている