統一選を前に:子育て環境と福知山

2023年03月27日 のニュース

 統一地方選を前に、京都府福知山市の課題を取材した。初回は「子育て環境」について。ほど良い田舎で、ほど良い都市機能を持つ福知山。「子育てしやすいまち」を裏付け、全国有数の出生率となっているが、隠れ待機児童が近年増えてきている。

 「復職まで残り約半年。今は不安しかありません」-。5歳と2歳の子を持つ福知山市内の40代女性は、保育施設の23年度入所申し込みをしたが、通える距離の園に入ることができず頭を抱えている。

 楽しく育児をしたいと、育休は3年間取得。その期間が今年10月で終わるため、9月入所で市街地の園を希望した。正社員で勤務先は市外。復職後はフルタイムで泊まり勤務もあり、まさか落ちることはないだろうと思っていたが、結果は通らなかった。

 「育休はこれ以上伸ばせない。実家は府外で遠く、頼れない。住宅ローンの支払いが夏から始まり、仕事を辞めるわけにはいかない。多少お金がかかっても子どもを預けられるところを探すしかない」

 市内に入所が可能な保育園はあるが、特定の保育園を希望してキャンセル待ちする場合は、「保留児童」と言われ、すべての保育園の定員がいっぱいで入りたくても入れない子どものことを指す「待機児童」にはカウントされない。

 福知山市の待機児童はゼロだが、「隠れ待機児童」とも呼ばれる保留児童が多くいる。市によると、18年度は51人だったが、19年度は81人に増えた。その後、0歳児から2歳児が対象の小規模保育園が市内に新設されたこともあり、横ばい状態となったものの、22年度には135人に増加。23年度はさらに増える見込みだという。

 3歳児から5歳児の保育料を無料とする国の政策や、共働き家庭の増加、3歳児からの入所はしにくいことなどが影響し、これまで以上に0歳児から2歳児の入所希望が増えている。

 保育ニーズは市街地と近辺に集中していて、入所可能な保育園が周辺部にはあるが、自宅や職場から遠く、通うのは現実的ではないと、母親たちは頭を抱える。なかには、育休を延長する母親や別居する自分の祖父母に子を預けて仕事に復帰するケースもある。

 解決策は、ただ単純に保育施設自体を新しく作れば良いというものではない。保育士が不足しているため、子どもの受け入れ数を増やすことができない。

 市も保育士不足を喫緊の課題だとし、22年度には新たに市内の保育所に勤務する保育士に支援金を補助する制度を新設するなど力を入れている。23年度の当初予算では、新たに昭和幼稚園で2歳児預かり保育を実施する予算を計上。しかし、保留児童数の抑制までには至っていない。

 自治体の子育て政策に詳しい福知山公立大学の川島典子教授は、「宮津では市が予算化し、有識者や園長を集めて保育サービスを拡充、適正化するための研究会を開き、新年度からは全就学前施設でおむつの無償提供を始める予定。保育士を増やすだけでなく、福知山にも、市が率先して保留児童が出ないように工夫、研究する努力がさらに必要」と話す。

 福知山市は人口7万6千人ほどのまちだが、合計特殊出生率(女性1人が生涯に産むと見込まれる子どもの数)の最新値(13~17年)が2・02と、本州で3番目に高い。

 近年の出生数は人口8万7千人の亀岡市や福知山と同規模の舞鶴市が500人前後なのに対して、福知山は600人台と多いが、「隠れ待機児童」の課題は残されている。

誰もが子育てしやすい環境整備が求められている。

 

写真=誰もが子育てしやすいまちへ課題は残る

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