厄払いしながらまち歩き 丹波巡礼の旅

体験してきました

 無くしたり、落としたり、失敗したり、最近ついてない。そんな気がする記者が、厄除けの願いを込めて丹波市内の神社を歩いて巡る「丹波巡礼の旅」に挑戦。外歩きにぴったりの季節、運動不足解消も期待しながらお遍路さん気分で歩いてみました。(2021年10月16日号掲載)

「丹波巡礼の旅」とは

 丹波市内各所の由緒ある神社でご利益を賜りながら、市の自然やまち並みも楽しんでほしいと、丹波市観光協会がこの秋から企画。JRの各駅を発着地点に市内の15の神社と周辺の観光施設などを歩いて巡る14のルートを設定した。現在、観光協会のホームページなどで2ルートを公開している。

丹波市観光協会 
TEL0795-88-5810
https://www.tambacity-kankou.jp/

1,軽快にスタート

山裾を歩く

 今回は、丹波市春日町の舟城神社と兵主神社を訪ねる約8キロのルートを体験。果たして歩き切ることはできるのか。

 10月の初旬、すがすがしい秋の空に連れられて、ちょっと早めの朝8時30分、JR石生駅を出発。観光協会のホームページにある巡礼ルートを確認しながら、大通りを避けて山裾の道へと入る。途中、発見した石碑には丹波自然歩道と刻まれていた。林に差し込む木漏れ日、群生するコスモスが目に優しく、トンビのヒンゴロと鳴く声、さわさわと葉が揺れる音も心地よく、軽快に進む。ただし目印が少ないので不安になる場面も。地元の方に道を訪ねると、親切に教えてくれた。

 歩き始めて1時間、最初の目的地「舟城神社」に到着。急な階段に息切れがしたが、その先には陽光に照らされ神々しく佇む本殿があった。

2,牛と疫病に霊験あらたか 舟城神社へ

舟城神社 丹波市春日町長王1 TEL0795-74-013

 舟城神社は1749年(寛延2)、祇園牛頭天王社として建立された。牛頭天王の名前と、神社の鳥居の前に牛市場があったことから「牛神さん」と親しまれ、牛を連れた多くの参拝客があったという。もともとは疫病退散を願い建立した社殿で、流行り病をおさめる神様としてあがめられていた。最近はコロナの終息を願い訪れる人もいる。

 丹波屈指の規模を誇る本殿は、建てられた年代、大工の名前などが分かっている点も珍しく、歴史的建造物としての価値が高い。木鼻に施された獅子や獏、龍の精巧な彫刻も見どころ。本殿から手前に延びる向拝は、後の世で増築されていて、年代による獅子の顔つきの違いが発見できて面白い。

 社務所も江戸時代からの貴重な建物で、珍しい装飾が残っている。住居も兼ねているが宮司の村山義人さんは「住むのには向いていませんよ」と笑って話す。

 悪疫消除と書かれた御朱印と、家に貼ると病気が入ってこないという、ありがたい歌札を授かり、再び歩き出した。

宮司の村山さん。後ろの木はタラヨウ

タラヨウは葉に文字を書くことができるので「葉書の木」とも呼ばれる
本殿の木鼻に施された眼光鋭い獅子の彫刻。中井家の作品

御朱印にも牛の印が押されている

歌札「風ならば さらりととおれ風の神  ここは祇園の氏子なりけり」と書かれている
神社の鳥居の前に牛市場があった

3,どこまでも続く一本道をひたすら歩く

黒井城跡が真正面にみえる。舟城神社と兵主神社を結ぶこの道はかつて塩の道街道と呼ばれていた

 厄災が取り払われた気分で足どりは軽い。次の目的地・兵主神社までは3.6キロある。のどかな田園風景の中、どこまでも続く一本道。真正面には黒井城跡が見える。

 気がつけば、太陽が高く上り、頭頂を照り付ける。

徐々に足に疲労が感じられるようになって、速度も落ちてきた。ついに「暑い、痛い」と弱音を吐く。

 一歩ごとに、これまでの悪行と、ため込んだ脂肪が落ちていくのだと自分に言い聞かせて進む。途中、出会ったお地蔵さんにすがる思いで旅の無事を祈る。

 正午を知らせる音楽「丹波市の歌」に励まされながら、1時間近くかけて兵主神社に到着した。

4,兵庫の守護神 兵主(ひょうず)神社 に到着

兵主神社 丹波市春日町黒井2956 TEL0795-74-0392

 兵主神社は、奈良時代の746年(天平18)、兵庫の守護神として鎮座された。公家、武家からの信仰があつく、とくに戦国時代は疱瘡(天然痘)の守護神として崇められた。鳥居の社号額は病気平癒のお礼にと1814年(文化11)近衛家から寄進されたものという。また、交通安全、災難防除にもご利益があるとされる。

 本殿の後ろに広がる森の中に、奥宮がある。「入ることをためらう方もいます」と宮司の村山勝一さんがいうように、他とは違う厳粛な空気が漂っている。枯れ枝や落ち葉を踏みながら恐る恐る進むと、磐坐(神様が降りてくる石)がある。また奥宮の狛犬は、足元に子犬と玉を置いていて、こちらも珍しい。

 境内には巨木が多く、県内第一で樹齢300年のオガタマノキ、近畿地方でもまれなナナミノキなど、見上げると圧巻の高さがある。

宮司の村山さん

巡礼の旅企画を受け、新たに作ったデザインの御朱印。磐坐、オガタマノキ、社号額などが描かれている
巻物御朱印帳もある

絵馬を眺めるのも面白い

近衛家から寄進された社号額

奥院へと続く森。厳粛な空気が漂う
奥宮に祀られた磐坐。よく見ると割れ目があり、鬼滅の刃の炭治郎が切った石みたい!? と一人テンションがあがった
足元に子犬と玉を置いている狛犬

5,足の痛みに耐えながらたどり着いたごはん。そして、ゴール!

じっくり煮込まれた野菜やお肉がゴロンゴロン入っているカレー(550円)
いちご畑 丹波市春日町黒井1573-1 TEL0795-74-0887

 兵主神社を後にし、黒井城跡で知られる黒井の街を歩く。愛宕神社や春日局の生地・興禅寺など見どころは多いが、足の痛みと疲労、空腹で断念。次の機会にすることに。

 最後に、黒井駅前から徒歩5分ほどの喫茶店「いちご畑」に立ち寄り、ちょっと遅めのお昼ごはん。お腹が空いていたので、店自慢の自家製カレーをいただく。トマトが効いた爽やかな味が疲れた体に染み渡る。

 午後2時。ようやくゴール地点の黒井駅へ到着。見どころが多かったこと、歩く速度が遅すぎたことで、通常3時間半のところを5時間もかかってしまった。厄払いできたのかはまだわからないけれど、辛い道のりを乗り越え踏破した満足感と心地よい疲れを感じながら、巡礼の旅を終えた。

いちご畑オーナーの林トクヨさん

店内は木とレンガを基調にした店内はアットホームな雰囲気で、手作りケーキや注文ごとに淹れるコーヒーが人気
黒井駅前にはお福さん(春日局)が。お疲れ様と言ってくれている?
道中、コスモスなどの花や山の美しい景色が見られる

今回体験したルート

巡礼の旅に出る前に

 今回、ウォーキング初心者の記者が実際に歩いてみて気が付いた、準備しておくとよいものを紹介します。

 途中、トイレや自動販売機などがないエリアがあります。トイレは神社か駅で済ますようにして、飲み物は必ず持参しましょう。

 8キロは歩き慣れない自分には、とても長い距離でした。運動靴を履き、帽子とタオルも忘れずに。ルート沿いに美味しいランチスポットが何カ所かあります。途中で立ち寄れば、疲れが回復しパワーチャージできます。ただし、時間や曜日によってはお休みの場合があるので、軽食を持っていくとよいです。

巡礼の旅オリジナル手ぬぐい

 観光協会が販売している巡礼グッズ。市内の観光案内所や道の駅おばあちゃんの里で購入できる。丹波市在住の木版画家・渡辺トモコさんがデザイン。巻いて歩けば、巡礼気分が高まる! 1800円。

2021年10月16日更新

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