周遊バス「たじまわる」で小さな旅
500円で満喫 但馬の名所巡り
周遊バス「たじまわる」で小さな旅
コロナが収まったら、旅に出たい―。遠出は難しくても、近場の旅なら気軽にできそう。
但馬の名所を巡る周遊バス「たじまわる」に乗車し、その魅力を体験してきました。
※取材は緊急事態宣言発令前に行いました。宣言中は運行状況が変更になる場合があります。
詳しくは、但馬観光協議会へお問い合わせください。
今回体験乗車したのは、日本遺産を巡るコース「鉱石の道号」。但馬地域に残る鉱山に立ち寄りながら、鉱山町ならではの景観、生活、文化を体感できるという、ロマンあふれる内容になっている。9月までの運行。
朝9時30分、和田山駅前にあるバス停から乗り込む。この日のガイドを務めてくれたのは藤原絵里子さん。「正面に竹田城跡が見えます。山がトラが伏せたように見えるので『虎臥城』とも呼ばれ…」「左側に見える石垣は、カラミ石という、鉱石をリサイクルして作った石を利用して…」など、車窓に合わせ、淀みなく但馬の街を解説してくれる。「へぇ、ほー」の連続で、早々と但馬通になった気分に。
史 跡 生野銀山
最初の目的地は「生野銀山」。807年の銀発見から1973年の閉山まで、千年以上にわたり稼働していた。掘られた坑道の総延長は350㎞、深さ880m。そのうち約1000mを見学することができる。薄暗く肌寒い坑道を進みながら、当時の人々に思いを馳せる。
採掘の様子を再現するために置かれた60体の人形たちは、マネキンアイドル「銀山ボーイズ」として活躍中。一人ずつ名前があり、“推し”を探しに訪れる若者も。
年中通して気温は13℃前後。左は「銀山ボーイズ」の翔君
「生野ハヤシライス」。トマトの酸味が利いた爽やかな味わい
お昼は、施設内のレストランマロニエで「生野ハヤシライス」を食べる。鉱山で働く従業員の奥様方が考案し、生野の名物になったという。
トロッコに乗れるフォトスポット
神子畑選鉱場跡
バスは、旧鉱山町の趣を残す生野の街を通り抜け、山を登り「神子畑選鉱場跡」へ。鉱石の選鉱場として東洋一の規模を誇った。山の斜面を利用した22階層になっていて、高低差は75m、幅は110mある。見上げる景色は圧巻。
丸形の巨大建造物「シックナー」(沈殿分離装置)は、まるで神殿のようだと廃墟マニアに人気。有名アーティストのミュージックビデオ撮影にも使われた。
丸形の巨大建造物「シックナー」(沈殿分離装置)は、まるで神殿のようだと廃墟マニアに人気。有名アーティストのミュージックビデオ撮影にも使われた。
シックナーイラスト入りTシャツがお土産に人気
明延鉱山探検坑道
ここだけ時が止まったかのような坑道の中。ガイドさんが鉱脈がみえる場所を照らして教えてくれる
次の目的地「明延鉱山」を目指す道中、車内で鉱山の歴史を伝える映像をまとめたDVDを鑑賞。汗だくで岩を堀り、石を運ぶ様子が映る。快適とは言えない労働環境だが、一方で街は栄え、暮らしは裕福だったという。
今回のコースで特に貴重といえるのが、日本有数の鉱山として栄えた「明延鉱山」の坑道探検。観光化していないため、荒々しい岩肌や露出した鉱脈など、当時のままの姿を見ることができる。足場は悪く、肌寒いが、まるでインディジョーンズの世界にいるようでわくわく。「いまはひっそりとしていますが、当時は機械の爆音が絶えず響いていたんですよ」など、地元のボランティアの解説を聞きながら、“生”の鉱山を体感できる。
ボランティアの正垣さんは、学習で訪れる子どもたちに解説することも多く、資源の大切さを伝えたいと話す
道の駅ようか但馬蔵
最後は道の駅「ようか但馬蔵」で、お土産タイム。特産の朝倉さんしょを使った加工品、農業高校生が作る新鮮野菜も売られている。
バスは、終着の和田山駅へ。両手いっぱいにお土産を抱え、500円とは思えない充実した旅を終えた。
今回お世話になったバスガイドの藤原絵里子さんと、運転手の花田充功さん
夢但馬周遊バス「たじまわる」
但馬観光協議会が企画、2014年から但馬地域のバス会社・全但バスが運行を開始した。JRなどの公共交通機関を発着地に、但馬地域の観光地を巡る。
通年のコースや季節限定コースなど6コースある。土・日・祝日のみの運行、車内ガイドつきで乗車料金はいずれも500円。予約優先。格安で安心安全な日帰りの旅を叶えてくれる。
【問い合わせ先】
但馬観光協議会 ☎0796-26-3686
秋はこんなコースがおすすめ
【プレミアム号】
城下町出石や竹田城跡などを巡る
【天滝もみじ号】
11月から運行する、紅葉の名所・天滝行きのコース
2021年8月28日号掲載