食べて応援 コロナに苦しむ生産者・卸売業者

 コロナ禍が長引き、飲食店は休業・時短営業が続いて厳しい状況にあります。飲食店を支える食材の生産者や卸業者は、さらに苦しい状況に直面。それでも「なんとか乗り切ろう」と、みなさん一生懸命です。紙面でエールをと、手がける食材に自信を持つ事業者を訪ねました。

目利きのプロが山の中で開店  鮮魚さかした

 福知山市三和町の山の中で、飛び切り新鮮でおいしい魚を売っていると評判の「鮮魚さかした」。店を営む坂下克己さんは鮮魚仲買人で、コロナ以前は近隣の飲食店向けの卸しを専門としていた。しかし、コロナの流行で売り上げは激減、緊急事態宣言が発令されると25軒の取引先のうち、22軒が休業という事態にまで追い込まれた。
「じっとしていたら、首つらなしゃあない」。一念発起し、自宅の敷地内に直売所を開いた。
長年の経験で培った目利きを生かし、直売所に並べる魚は料亭で食べられるのと同等ランクのものばかり。それを直売ならではの良心的な価格で販売する。
刺し身や切り身にさばいたり、加工するのは妻の和佳代さんが担当。イカやカレイの一夜干しは機械で作るのが一般的だが、「味がぜんぜん違うから」と、手間でも天日干しにこだわる。藁焼きで作るカツオのたたきは、臭みが無く香ばしく、4日連続で買いに来た人もいた。
毎日舞鶴漁港や近隣の市場を回るため、開店は午後2時。それでも、並べた品は当日のうちにほぼ売り切れるという。
「なんでこんな山の中で魚屋しとるん?」と聞かれるが、「なんでこんな山ん中まで買いに来なさった?」と返す。夫婦と交わす軽妙なやりとりも魅力の一つ。口コミで遠方からの客も増えつつあるが、「冷蔵庫や製氷機など設備にもたくさんの資金がかかった。まだまだ頑張らないと」と話す。

鮮度抜群の魚が並ぶ。要望に応じ、その場でさばくことも

左=和佳代さんのお父さんも仲買人だったという。魚のさばき方は、小さなころから身につけていた

右=開店時はのぼり旗を立てる。通り過ぎないよう注意

福知山市三和町辻289-1
☎090-9889-4063(電話予約可)
営/14:00~19:00
休/土・日曜日

都府のブランド畜産物「京地どり」を全国に 岡本ファーム

精悍な見た目をしている京地どり。焼き鳥店から高級フレンチまで様々な飲食店で愛されている

1品ずつ丁寧にパックしていく

 親子で営む岡本ファームは、京都府のブランド畜産物「京地どり」を育てている。福知山市の道の駅「農匠の郷」や、ふくちマルシェで小売りもしているが、主力は飲食店向け。コロナの影響で取引先の多くが休業し「売り上げも痛手だけど、おいしい京地どりを食べてもらえないのがつらい」と、父の岡本嘉明さんは残念がる。
京地どりは歯ごたえが良く、風味が豊かな一方、飼育が難しい。特別なえさを与え、飼育日数もブロイラーの倍以上かかるとあって、販売価格は高くなる。岡本さんは2014年に飼育を始めてから、様々な機会を利用してPRに務めてきた。東京、大阪、京都など都市部の高級店を中心においしさが認められ、取引先が広がっている中だっただけに、気落ちは大きい。
それでも積極的に設備投資に取り組み、最近、冷凍庫に新しい装置を取り付けた。特殊な電波を放射することで食材の鮮度を長く保つことができ、「解凍した時にドリップが出ないので、おいしさをそのまま維持できる。宣言が明けたら、おいしい地鶏をみなさんにいっぱい食べてもらいたい」と、岡本さんは意欲をつなぐ。

福知山市夜久野町今西中710 ☎0773-37-0664

米にこだわり、土地の思いも仕込む地酒 東和酒造

いろんな銘柄の酒を造っている

 福知山市上野で地酒「福知三萬二千石」を造る東和酒造は、地元のほか首都圏や京阪神など都市部の日本酒専門店・飲食店で人気を得て来た。そのまま緊急事態宣言の対象地域と重なり、出荷が止まって倉庫は在庫で埋まった。
不安ばかりが募る毎日だったが、窮状を知った飲食店が、まとまった数を買い付けてくれたのが、ありがたかった。「休業してる間に新たな逸品を探そうと」と、遠方から尋ねてくれた飲食店主もいて、勇気づけられた。
女性杜氏の今川純さんは、日本酒の原材料となる米に、強いこだわりを持っている。地元の人たちに協力してもらい、酒米の栽培面積を増やしてきた。「なので、苦しいから来年用の米はいりません、なんて言えません」。栽培面積を減らせば、せっかくの田んぼが荒れてしまう。「手を携え農地を守る」ことは、良い酒を造ることと並ぶ、東和酒造の柱だ。
とはいえ、在庫はまだ多い。心を込めた大事な酒を傷めるわけにはいかず、4機あった業務用冷蔵庫を1機増設した。新しいのは5坪(約16.5平方㍍)の大きさがある。せっせと倉庫から移して、宣言明けを待つ。
ただ待つだけでもない。夏向けの、ロックでもおしいいにごり酒「夏の純米にごり」(720㍉リットル、1650円)、2種類の酵母を使って口の中でフルーティーな香りが次々弾ける原酒「なついろ」(同)に加え、緊急事態宣言終了後には、新商品を出すことにしている。

右=新商品の原酒「なついろ」を手に杜氏の今川純さん

左=増設した業務用冷蔵庫

福知山市字上野115 ☎0773-35-0008    
営/9:00~16:00  休/日曜日・祝日

注文を受けてから切り分ける 鮮度抜群の精肉店 
奥丹波みたけ牛 谷牧場

 住宅街に突如現れる牛のオブジェが目を引く精肉店「奥丹波みたけ牛谷牧場」は、近隣の飲食店やホテル向けの卸売と、店頭での小売を2本柱として経営。谷敦司社長を中心に、3人の息子たちが店を盛り立てている。しかし、相次ぐ取引先の休業、時短で、卸売部門の売り上げはほとんど無くなった。さらに輸入肉の価格高騰も追い打ちをかけている。
今、店を支えているのは小売部門。福知山市三岳にある自社牧場で育てる希少なブランド牛「奥丹波みたけ牛」や国産牛、輸入牛、豚や鶏肉など幅広く扱う。「美味しいお肉を買うならここ」と評判で、市内外から来店客がある。このほど、家で焼肉やバーベキューをする人向けにと、扱う肉の部位をさらに増やした。
清潔感のある店内には、精肉店にあるべきショーケースを置いていない。「空気に触れる時間を短くし、新鮮な状態で食べてもらうため、注文を受けてから切り分けています」と、長男の昇太郎さん。厚めに切って欲しい、グラム単位で小分けにして-などの細かな要望にも応える。
冷凍のハンバーグやギョーザなど、自家製の惣菜も人気がある。食べ応え満点のあらびき肉を使っていて、家のフライパンで焼けば、肉汁溢れる贅沢な味が楽しめる。店のカウンターには出来立ての唐揚げやミンチカツが並んでおり、そのまま食卓に並べるだけで今夜のごちそうに。

人気のたにぼくバーグ(1個216円)

左=こっちをみているつぶらな瞳の牛がお店の目印

右=3兄弟の長男・昇太郎さんと明るくお客さんを迎えるスタッフの小野川さん

福知山市旭が丘105 ☎0773-24-0883(電話予約可、発送も受ける)
営/9:30~18:30  休/1月1日

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