一年の幸せ願う気持ちをお重に詰めて お節
正月の食卓を華やかに彩るお節料理。料理一品ごとに健康や開運などの願いが込められている。我が家の味をと時間をかけてコトコト煮炊きする家庭、プロの味を求めて飲食店から取り寄せる家庭と様々だが、どのお節にも、お重には家族の一年の幸せを願う気持ちが詰まっている。
福知山市正明寺の福知山淑徳高校では、総合学科調理系列の生徒たちが、毎年市民から注文を受け付け、課外授業でお節を作ってきた。
ところが今年は新型コロナのため取り組みを断念。お節の実践授業は無くなった。代わりに紙面で「お節の勉強を」と、調理系列主任教員の杉本昌之先生に、お節の由来など聞いた。
【写真】杉本先生
まめに働き、めでたく、子孫繁栄と長寿も
まず代表的な黒豆。まめに(勤勉に)働き、まめに(丈夫で元気に)暮らせるようにとの願いが込められている。ごまめは田作りと呼ばれ、昔は鰯が田んぼの肥料に使われていたことから、豊作祈願になっている。
鯛は、めでタイ。昆布巻きは、よろコブ。巻いてあるので様々な縁を「結ぶ」ことにも。かまぼこは半円形をしているので、日の出を象徴していて、これもめでたい。
数の子は、たくさんの卵で「子孫繁栄」。ニシンの子なので「二親」健在にも通じる。イクラも子宝を願った縁起物。里芋も、親芋にたくさんの子芋ができるので子孫繁栄を象徴している。
エビは、腰が曲がるまで長生きをと。巻き貝のような形をしたシソ科のチョロギは「長老喜」「千代呂木」とも書き、長寿を願って入れる。
タコは1回冷凍 黒豆は蜜のつけかえ
「お節料理は、やる気と根気。調理に日にちのかかるものばかりです」と杉本先生。それでも時間を短縮する方法は、ある。多幸の字をあてるタコは、大根でたたいたりと本来は手がかかるものだが、家庭なら「1回冷凍すると細胞が破壊されて柔らかく炊き上がります」という。
黒豆は、豆をもどしきった後、じっくり炊くのではなく蜜の濃度を徐々に上げていく「蜜のつけかえ」をすると早くおいしく炊ける。仕上げに風味付けのブランデーを入れるのがポイント。
伊達巻きは、学校の調理では魚のすり身を使うが「家庭だとハンペンを使うと手軽に柔らかく、ふんわり出来ますよ」とアドバイスする。
【写真】生徒たちはお節の「心」も学ぶ
2020年12月12日号掲載