夏の神鍋高原で涼しいグルメ

暑い日が続く今年の夏、涼を求めて兵庫県豊岡市日高町神鍋高原へ出かけてみては。

神鍋高原へは、北近畿豊岡自動車道・日高神鍋高原インターチェンジから国道482号で向かう。

約2万年前に火山活動のあった神鍋山(標高469m)を中心にした高原で、テニス、ゴルフ、パラグライダー、温泉など、スポーツレクリエーションのゾーンとして知られている。また、高原野菜や山の幸、野の幸、川の幸などおいしいものがたくさんある。

昔ながらの手作り豆腐が評判―蘇武の里

 神鍋高原は、周りを1000m級の山々に囲まれ、清らかな伏流水に恵まれた水の里。このきれいな水と豊かな自然に魅せられ、川田四郎さん・恵美子さん夫妻が移り住み、14年前に「手作り豆腐 蘇武の里」を開いた。

 四郎さんは18歳で豆腐メーカーに就職。工場長も務め55歳で退職するまで豆腐作り一筋の人生を送ってきた。その四郎さんが、「赤ちゃんからお年寄りまで、みんなが食べるお豆腐だからこそ『安心・安全』にこだわりたい」と、退職後間もなくこの店を始めた。

 豆腐の命は水と大豆。蘇武の里では、氷ノ山後山那岐山国定公園の東端にある蘇武岳(標高1074m)からの湧水「蘇武の縄文水」、大豆は全国から厳選した国産大豆のみを使っている。これを長年の経験で培った職人技で丁寧に手作りする。

 ざる、木綿、絹ごし、厚揚げ、うす揚げ、豆乳など、こだわりの商品は「大豆の旨味が生きている」と評判。包装後の加熱殺菌をしないので、その日作った豆腐だけを店頭で販売している。

 工場の隣には、妻の恵美子さんが切り盛りするお食事処がある。以前小さな惣菜店をやっていた経験を生かした手作りの家庭料理と、近所の青山直也さんのおいしいごはんの日替わりのランチセット。青山さんが作る神鍋産の完全無農薬コシヒカリは、昨年11月に岐阜県高山市で行われた「第20回米・食味分析鑑定コンクール国際大会」の、都道府県代表お米選手権部門で特別優秀賞に選ばれた。さらに、そこに四郎さんの手作り豆腐のバイキングが付いている。ランチセットは1100円。200円プラスでドリンクが付き、400円追加でケーキセットが付く。

 いまは娘さんのご主人・神﨑崇彰さんが四郎さんと一緒に豆腐作りをしている。朝早くから作った豆腐を下(日高町松岡)で経営する「まめcafe」で販売し、カフェ限定で豆乳ソフトクリームや豆乳ドーナツも提供している。

【写真】右上の写真は人気のざる豆腐

手作りのおかずが並ぶボリューム満点のランチコース

ざる・木綿・絹ごし豆腐。冬は湯豆腐も

川田四郎さん・恵美子さん夫妻

開店と同時に地元の人や観光客らお客さんが訪れる

【DATA】
所/豊岡市日高町万劫190-1
TEL0796-45-2692
営/販売10:00~18:00※売り切れ次第閉店
ランチ11:30~14:00(L.O.) 
月・火曜日

お食事処 郷土料理亭 和楽(わらく)

そばと郷土料理

 自然豊かな神鍋高原の山々に囲まれ、森に溶け込むように古民家風の建物がたたずみ、まるで昔話に出てくるような素朴で心温まる光景が広がる。和楽は、1日1組限定の宿「山笑」、食事処「わらく」、そば処「無量庵」からなる。

 山で採れる旬の野菜や水がきれいな川で取れる魚など、但馬地方の食材を使い、丁寧な手作りにこだわり、素朴ながら洗練された郷土料理の数々を届けている。

【写真】玄関ひとつにもこだわりの演出が見られる

 そば処「昼膳無量庵」では、旬の味覚と神鍋名物のオリジナル豆腐そばを味わうことができる。

【写真】神鍋名物の豆腐そばと郷土料理の昼膳

【DATA】
所/豊岡市日高町太田1348-1
TEL0796-45-0101
営/11:30~14:30(L.O.)17:30~21:00(L.O.)
休/月曜日(祝日の場合は翌日)

やまめ料理 阿瀬

阿瀬渓谷を眺めて

 氷ノ山後山那岐山国定公園、阿瀬渓谷の入り口にある昭和48年(1973)創業のやまめ料理の老舗。日高町でも最奥に位置するこの辺りでは、昔から炭焼きが盛んだった。しかし高度経済成長期になると、炭を焼く人も少なくなり、過疎化が進んだ。

 これを憂いた創業者の中西郁夫さんが「少しでも人が来てくれたら」と、子どもの頃から川で追いかけていたヤマメを養殖し、釣りを楽しんでもらおうと考えた。そのうち「その場で焼いて食べたい」という人が出てきて、現在地で小さな店を始めることに。でも、最初は何も分からず、見かねたお客さんが、料理や盛り付け、店づくりなど、一つひとつ教えてくれたと言う。

【写真】阿瀬渓谷のせせらぎが涼感を運ぶ

 完全予約制。メニューは、ヤマメの塩焼き、刺身、天ぷら、山菜料理などからなるコースで、4100円、3070円、2550円(いずれも税込み)。

【写真】囲炉裏で焼いて食べる新鮮なヤマメの塩焼き

【DATA】
所/兵庫県豊岡市日高町金谷
TEL0796-44-0723
営/完全予約制  
休/火曜日 
Pあり

本格手打ち 殿さんそば

地元産の十割そば

 日高町殿地区で地元のそばを使って地元の人が打つ。地域振興を目的に平成17年(2005)にオープンした。地元産へのこだわりから『殿産』という意味も含まれていると言う。

【写真】そば店の周りにはそばの畑が広がっている

 そばは地元の休耕田などで、有機肥料のみを使い無農薬で栽培。玄そばと脱皮機にかけた実を独自の比率で合わせて挽いた特別な粉を使用。そこに阿瀬のおいしい水を加え、つなぎを使わないそば粉十割のそばを打つ。「水を少しずつ入れ、全体に満遍なく回すのがコツ。毎朝、その日の分を打ち、お客さんに出す時は、注文を受けてからゆがきます」と店を切り盛りする殿・村おこし組合。

 少し太めの田舎そばで、混じりけのないそば粉の味と香りが特長。これを、かつおと昆布のだしに自家製のかえしを加えた、辛みと甘みのある特製のつゆで味わう。

【写真】そば粉100%、本格手打ちの殿さん

【DATA】
所/豊岡市日高町殿810
TEL0796-44-1888
営/11:00~17:00  
休/火曜日 
Pあり

十戸のわさび

神鍋高原の湧水が育む

 豊岡市日高町十戸は標高80mという低地でありながら、水温が12~13度と年中変わらない神鍋高原からの冷たい湧水に恵まれ、約300年前の享保年間(1716~35)からワサビの栽培が始まり、「十戸山兪菜」として広くその名を知られてきた。

 ワサビの楽しみは風味。おいしくおろすには、刃の細かいおろし器で、ゆっくり、やさしく、大きな円を描きながら練るようにおろす。刺し身やそばとの組み合わせは定番中の定番。最近は、肉料理にたっぷり乗せる、身近にある『和』の食材に軽く混ぜるなど、利用の幅がグンと広がっている。

【写真】神鍋高原からの湧水が育むわさび田

 地元の人が子どもの頃からよく食べてきたのが「ワサビとちりめんじゃこ」と言う。おろしたワサビとちりめんじゃこに少量のしょうゆを垂らして和えるだけの簡単な料理だが、特に食欲が落ちる夏におすすめ。

【写真】ワサビとちりめんじゃこ

風穴庵

昔ながらの麦飯とろろ風穴庵

 神鍋高原には、神鍋山が噴火した際の溶岩やガスが抜けた後にできた穴「風穴」がある。年間を通して8度の風が吹き出し、地元の人たちは天然の冷蔵庫として利用していたという。

【写真】風穴からの風はひんやりとして気持ちいい

 その隣にある風穴庵は、神鍋高原で採れる山芋などを使い、「神鍋の素朴な味を楽しんでもらおう」と昭和51年(1976)に開店した。

 名物は「麦飯とろろ」。山芋の中でも最も粘りが強く、食感も濃厚なつくね芋を、江戸時代から使われてきた銅のおろし金ですりおろした後、すり鉢に入れ、すりこぎであたり、鰹と昆布で取っただしに、しょうゆとみりんを入れた「だし汁」を少しずつ加えて伸ばす。これを麦飯にかけて食べる。

 昔から「麦飯とろろ18杯」と言う。喉越しが良く、食欲が落ちる夏にはもってこいだ。

【写真】昔から変わらない「麦飯とろろ」

【DATA】
所/豊岡市日高町栗栖野841
TEL0796-45-0551
営/11:00~17:00
水曜日(祝日の場合は翌日休) 
Pあり 

2019年8月10日号掲載

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