但馬に日本一ダメで素敵な道の駅

アユの季節を迎えた。兵庫県但馬地方には、アユを名物にした道の駅がある。香美町の道の駅あゆの里矢田川。ただ、この道の駅は、別の呼び名で全国の道の駅ファンに知られている。「日本一ダメな道の駅」。え? いったい、何がダメなのかな?

名物駅長が張り切る 「あゆの里矢田川」

 施設があるのは香美町村岡区長瀬。但馬大仏(長楽寺)近くの国道9号と香住漁港を結ぶ県道4号線沿いにある。1999年の完成当時は交通量が多く、道の駅もにぎわったが、但馬の道路整備が進んで車の流れが変わると、パタリと客足が途絶えた。

 最盛期に年間約5千万円あった売り上げが、18年目には1100万円余りにまで落ち込んだ。観光協会の広報担当をしていた阿瀬大典さん(当時40歳)が、17年12月に4代目駅長を引き受けた時には銀行口座の残高が15万円。1月の支払いをしたら1万円しか残らない。阿瀬さんは若い頃の流行歌をもじり「マジでつぶれる5日前」と、窮状をネットで訴えだした。

 村おこしは「よそ者、若者、バカ者の手で」と言われる。阿瀬さんはこの3つとも当てはまる。よそ者(姫路出身)で、若者(町内では)、そして…それまでの慣習にとらわれない。

 「ダメな道の駅」と厳しい経営状況を自虐たっぷり、しゃれっ気いっぱいに訴えた。記念日には先着で整理券配布をした。客の来ない深夜0時から、駅長の握手券のー。そんなゆる~い冗談もネットでうけ、「おもしろい道の駅がある」「ゆかいな駅長がいる」と話題になり、通りがかりに立ち寄るのではなく、ここを目的に多くの人がドライブするようになった。

 話題性だけで乗り切るのではなく、売り場や食堂のメニューを見直した。車中泊が人気だと分かると隣接してRVパークを開設。人が集まるようイベントも積極的に開催してきた。

 「やるべき経営上の改革」を行い、危機的状況は脱した。「それでも、気を抜くとダメ。これからもしっかり盛り上げていきたい。新商品の開発も次々やっていきますヨ」と名物駅長は意気込む。

【写真】あの手この手で経営危機を乗り切ってきた阿瀬駅長。道の駅のキャラクター「あゆか」と一緒に

道の駅にある加工施設で地元のみなさんが仕込む「矢田川みそ」(700g、780円)。資金難と人手不足で生産を中止していたが「人気なんだから造ろうよ!」と復活させ、昨年から販売を再開

道の駅から見下ろす矢田川はアユが釣れる清流

駅長が味に太鼓判を押す、道の駅製のみそを使った矢田川みそラーメン(780円)

囲炉裏のある店内。手前は、1尾ずつ丁寧に焼くアユ、山菜などの天ぷらが人気の矢田川定食(1500円)

【所】兵庫県美方郡香美町村岡区長瀬933-1

TEL0796-95-1369

【営】9:00~18:00(トイレは24時間。駐車場での長めの休憩も歓迎)

【休】火曜日

2019年6月8日号掲載

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