昔ながらの手作り豆腐

 「とーふー」。ラッパの音に、人々がボウルを持って駆け寄る、懐かしい昭和の風景。豆腐は、昔から日本の食卓に欠かせない食べ物だった。

 今では、工場で大量生産された低価格の商品に押されて、町の豆腐屋さんは姿を消しつつある。作り手の高齢化や機械が故障した時の高額な修理代も追い打ちをかける。

 手間はかかっても、豆の味がちゃんとする豆腐を届けたい―。昔ながらの製法を守り続ける豆腐店を訪ねた。

丹波市 大槻豆腐店

 午前3時、大槻豆腐店の明かりはすでに灯っている。昨日のうちに水に浸けておいた大豆をすりつぶし、豆乳を搾る。にがりを加えて形を整え、切り分ける。雪が降ろうと、台風が来ようと、365日休むことはない。

 丹波市市島町にある大槻豆腐店は、昭和初期の創業。4代目の大槻龍夫さんは、小学生のころから家業を手伝い、豆腐作りは父親や祖母の作業を見て学んだ。代替わりしてからは、妻の順子さん、息子の貴彦さんの3人で、昔ながらの味を守っている。

 濃度の高い豆乳で作る豆腐は、絹ごしでもお箸で持てるほどしっかりしている。舌の上でつるりととけて、濃厚な豆の味が広がる。

 大豆、水、にがり。シンプルな材料ゆえに、豆の個性や1、2度の気温差が仕上がりに影響する。特に、豆乳とにがりを合わせる工程は、作り手の喜怒哀楽が味にでてしまうほど繊細な作業で、熟練の技術がものを言う。

 特大の油揚げは、妻の順子さんと長男の貴彦さんが手揚げする。形が三角なのは、菜箸でひっくり返しやすいから。110℃の低温の油と204℃の高温の油で2度揚げし、きつね色に仕上げる。 

 午前7時過ぎ、出来上がった商品の配達へ。地元スーパーや料理店、病院へも卸している。

 出来立てを届けたいと、作り置きはしないのが信条。そのため休日はなく、貴彦さんは家族旅行の記憶がほとんどない。

 「ほかの豆腐を食べても、やっぱりここのがよいわーと言ってもらうときが何よりうれしい。」

 旧氷上郡(現・丹波市)に20店以上あった豆腐店も、現在はわずか3店ほど。市島町ではここだけになった。大槻さんは、「ただひたすら、まともなものを作ろうとやってきた。豆腐業を全うしたいと思っている」と語る。

3人の誰が欠けても豆腐作りはできないため、健康管理に気をつけている。毎日夜の8時ごろに寝るといい、早起きは「どってことないよ」

ファンが多い油揚げ。この日は300枚ほど揚げた

成形したあつあつの豆腐を冷たい水の中へ入れて、等分に切り分け、パック詰め。作業場には暖房がないが、年中半袖で作業

丹波市市島町上垣362-1 TEL0795-85-0109

【販売先】丹波市/フレッシュバザール柏原店・春日店・山南店 
福知山市/三ツ丸ストア堀店・駅南店・ 前田店、PLANT-3福知山店

舞鶴市 安積商店

 1953(昭和28)年の創業間もなく老舗スーパーマーケットとの取引が始まる。以来、卸販売専門で、店頭での直売はしていない。

 「小学校の頃から焼き豆腐づくりの手伝いをしていた」という三代目の安積和雄さんだが、高校卒業後は他の仕事に就いた。当時はバブルの絶頂期で、豆腐も造った分、売れた時代。24歳で呼び戻され家業を手伝った。それから30年たつが、「豆腐の世界は奥深く、まだまだ修業中」と言う。目指すは“食べて喜んでもらえる商品づくり”。絹、木綿、寄せ豆腐、油揚げ、特に天然ニガリ100%のザル豆腐(受注生産)には手ごたえを感じている。

自慢のザル豆腐を持つ安積さん

〝とうふ処 あづみ〟の銘柄でスーパーに並ぶ

歴史を感じさせる工場

舞鶴市余部上68 TEL0773-62-5146

【販売先】中・東舞鶴地区のフクヤ(中舞鶴店・白鳥店・東舞鶴店・こうじや店)
【商品(税別)】絹ごし豆腐140円/木綿豆腐140円/寄せ豆腐198円/油揚げ98円

丹波市 本庄豆腐店

 創業は江戸時代。織田藩の城下町、丹波市柏原町で代々豆腐店を営んできた。現在は5代目の本庄康員さんと妻の知子さんが、先代から受け継いだ製法で店を守っている。12年ほど前にお店を改装、昔からの常連さんはもちろん、若い世代の来店も増えた。

 店舗兼作業場なので、出来立てがすぐに店頭へ並ぶ。とろける口当たりの上品な絹ごし、武骨な木綿。どちらも豆の味がしっかりするので、温奴などシンプルな料理で十分なご馳走になる。薄揚げは、オーブントースターで香ばしく焼くと、おつまみにもってこい。甘辛い煮物に最適な厚揚げも人気がある。

柏原の商店街に店を構える。実直に豆腐作りに打ち込む康員さん、穏やかな笑顔で接客する知子さん

お店の奥で、康員さんが豆腐作りをする様子が見れることも。出来立てが、店頭に並ぶ。

丹波市柏原町柏原167-5 TEL0795-72-0122
(営)9:00~19:00 (休)日曜日

【商品(税込)】もめんとうふ120円/きぬごしとうふ120円/やきとうふ(3枚)180円/うすあげ120円/あつあげ60円/おから50円

福知山市 松井豆腐店

 毎週日・月・火曜日の午後2時から6時まで、三和町千束の国道9号沿い、町内唯一だったスーパーマーケット跡で開店する「夕焼けマーケット」。地元産の野菜や加工品の中に松井豆腐店(松井恵子代表)の豆腐が並ぶ。

 1957(昭和32)年創業。同町菟原下でかたくなに昔ながらの手造りを守り続けている。「豆腐の80%は水。だからおいしい水が必要です。ここでは昔から地域の生活用水として使われてきた名水『轟の水』を使用している」と言う。卸先が減り、生産量こそ減ったが、絹ごし豆腐、木綿豆腐、焼き豆腐、厚揚げ、100%黒豆を皮ごとすりつぶして使う「黒豆とうふ」などを造っている。

豆乳が濃く、しっかりうまい

絹ごし豆腐を水に放つ

夕焼けマーケットで住民の交流も

福知山市三和町菟原下124 TEL0773-58-2659

【販売先】 夕焼けマーケット、三和荘
【商品(税込)】黒豆豆腐300円/絹ごし豆腐150円/木綿豆腐150円/焼き豆腐150円/厚揚げ110円/おから100円

2019年2月23日号

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