第38回小説すばる新人賞、福知山出身の平石蛹さんが受賞 来年2月に単行本出版へ
2025年09月27日 のニュース
集英社が主催する「第38回小説すばる新人賞」に、京都府福知山市出身、平石蛹さん(28)=大阪府在住=の長編小説「ギアをあげた日」が選ばれた。5年にわたる長いスランプを乗り越え、ようやくつかんだ夢への大きな第一歩。来年2月の単行本出版が決まり、小説家デビューを飾る。
この賞は、エンターテインメントの作家として活躍する人材の登竜門として設けられ、五木寛之さん、北方謙三さん、宮部みゆきさんらが選考委員を務める。これまでに花村萬月さん、荻原浩さん、朝井リョウさんなどの人気作家を輩出し、今回は1221編の応募があった。
平石さんが小説を書き始めたのは20歳から。それまであまり小説を読んだことはなかったが、文章を書くのは好きだった。中学時代には、税の作文で府中丹広域振興局長賞、社会を明るくする運動の府作文コンテストでは府教委教育長賞を受賞したこともある。
また中学、高校では陸上部に所属。中学3年で全国中学校体育大会陸上競技女子800メートルに出場するなど、アスリートとしての側面もある。陸上では体力だけでなく精神力も鍛えられたといい、「追い詰められて強さを発揮する性格です」とほほ笑む。その精神力は、後の執筆活動でも生かされることになる。
22歳で小説現代長編新人賞の最終手前の3次選考まで残った経験が大きなプレッシャーとなり、長編が書けなくなるスランプに陥った。それでも短編は書き続け、第57回北日本文学賞で選奨を受けるなど成果を残した。
その後しばらくは賞に結びつかない時期が続き、重圧感に悩む日々を過ごしたが、ようやく自身を解放。「楽しく書こう」と吹っ切れたことで、今回の作品を完成させることができた。
作品は、宗教団体の降り子(創父=宗教の創始者=の生まれ変わり)として信者から崇拝される小学4年の吉沢癒知、そして転校生の渡来クミが、宗教団体や両親に振り回されながらも、心を通わせていく-という物語。
過去作品の3、4倍もの時間をかけ、納得のいくものに仕上げたこともあり、喜びもひとしお。「ビデオ通話で祖父母や両親に受賞を知らせると、自分のことのように喜んでくれてうれしかった」
平石さんは「福知山はとても大切な地元です。夢を応援し続けてくれた家族、親族や友人、学校の先生など、たくさんの方に支えていただきました。少しずつでも恩返しできるよう、執筆活動を続けていきたいです。受賞作の発売はもう少し先になりますが、お手に取っていただければ」と話している。
写真(クリックで拡大)=受賞を喜ぶ平石さん