水素エネルギーの地産地消 京都府が長田野で実証事業

2024年06月18日 のニュース

 使用しても二酸化炭素を排出しない次世代のエネルギーとして期待される水素。京都府は、持続可能なエネルギーシステムの構築をめざして、水素エネルギーの導入と普及を推進している。6月の環境月間に合わせて、府が府北部で取り組む実証事業を紹介する。

 水素は、水から作ることができる。気体、液体などさまざまな状態で貯蓄、輸送が可能で、エネルギー効率の高さや環境負荷への低さから、脱炭素化に必要不可欠なエネルギーとして注目を集めている。

 府は水素の製造、輸送、利用を一貫して支える仕組み「水素サプライチェーン」の構築に向けて、水素で走る燃料電池自動車や、ガソリンスタンドのように水素を充填する水素ステーションの普及に取り組んでいる。

 さらに府北部では2021年度から、水素で動く燃料電池フォークリフト(FCFL)の普及に向けて、製造や物流施設で実証事業を進めている。府北部に移動式水素ステーションの駐留地を設け、そこからFCFLを試験導入する企業へ水素を届ける。

 21年度は舞鶴市内で行い、22年度は範囲を広げて、福知山市のSECカーボン(長田野工業団地)、綾部市の片山化学工業研究所(綾部工業団地)にも、舞鶴市の駐留地から水素を週1、2回配送した。

 22年度までは府外で生産された水素を使っていたが、23年度は長田野工業団地で「地産地消型のモデル事業」に取り組み、新たに水電解による水素製造に挑戦した。昨年12月から3月までの3カ月間、工業団地に立地する5社がFCFLを試験導入。団地内のSECカーボンに設置した水電解装置で製造した水素を5社に供給し、FCFLを日々の業務で使用してもらった。

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 3月に福知山市昭和新町の府立中丹勤労者福祉会館で、市内外の事業者向けに水素セミナーを開き、国の動向や府の事業などを説明。FCFLの実証事業を行うSECカーボンを訪れて、約80人が水素エネルギーについて学んだ。

 3年間を振り返り、京都府は成果として「参画いただいた企業や府民らにFCFLが安全かつ、性能面でも問題なく使用できることを理解してもらえた」とする一方、「水素、FCFLの導入コストが高く、水素を供給するインフラの整備、需要創出などへの支援が必要」と課題を上げる。

 4年目となる今年度は、中北部地点に水素ステーションを臨時的に設置し、物流事業者と連携して北部と南部の拠点間を燃料電池トラックが試験運行する。燃料電池トラックの早期導入や府中北部への水素ステーション整備への機運の醸成をめざす。

 現在調整中だが、府は北部の拠点に長田野工業団地を考えていて、再生可能エネルギーを使ったグリーン水素の製造にも着手したい考え。

 府は「現時点ではまだ水素利用が進んでいるとは言えないが、3年間の実証事業を通して、企業からの理解が進み、関心も高まってきている。まずは長田野工業団地において、グリーン水素を活用した地産地消型の実用モデルの形成をめざし、水素需要の創出や供給体制の整備などに向けた取り組みを着実に進めていきたい」と話している。

 
写真(クリックで拡大)
 ・移動式水素ステーションを見学する事業者たち(3月、SECカーボンで)
・燃料電池フォークリフト
・府の事業などを説明する水素セミナー(3月、府立中丹勤労者福祉会館で)
 ・専用のノズルから水素を充填
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