住民に欠かせない「鬼タク」 3年で会員3倍

2024年02月08日 のニュース

 京都府福知山市大江町を「鬼タク」が走っている。地元に伝わる鬼伝説にちなみ名付けられた交通空白地有償運送事業の車両で、住民の買い物や通院、観光客の送迎などに欠かせない存在となっている。2021年7月に事業者協力型の有償運送事業としてスタート。住民たちから「気軽に使える」と好評で、認知が高まり、利用会員は着実に伸びている。

 交通空白地有償運送事業は、バスやタクシーなどの公共交通による移動手段が十分に確保できない場合に、地域組織やNPO法人などが自家用車を利用して、営利とは認められない範囲の運賃で運行する制度。

 過疎化による市バスの減便などで交通空白地となる大江町では、住民自治組織の大江まちづくり住民協議会(岡野和樹会長)が、市内のタクシー事業者・慶和(ふく福タクシー)に、予約受け付け、配車手配などの運行管理面での協力を得て取り組んでいる。

■生活利用と観光利用の2本柱■

 鬼タクは、地域住民の日常的な移動手段となる「生活利用」と、自然豊かな観光地を巡る「観光利用」の2本柱で運行している。ともに大江町内がエリアで、生活利用の運賃は距離に関係無く1人1回(片道)400円で、会員登録料として1人500円(登録時のみ)がいる。

 スタート当初の生活利用の登録会員は52人で、現在は3倍の156人に増えた。高齢者が中心で、平均年齢は82歳。最初の年間実績が出た昨22年度(4~3月)の利用数は874件だが、自宅前と町内目的地までを行き来する「ドア・ツー・ドア」の送迎が好評で、今年度は12月末までに、すでに800件に上り、年間実績では昨年度を上回りそう。行き先は医療機関、小売店、金融機関、駅などが多い。

 昨年6月に利用会員登録をした女性(87)は「気軽に頼めるところがいいですね。ドライバーの方にも親切にしてもらっています。鬼タクがなければ生きていけない」と喜ぶ。

 観光利用は土日・祝日限定で、大江山方面と才ノ神の藤方面に行く2コースがあり、運賃は片道1回1人当たり800円。今年度12月末までの利用件数は98件で、92件だった昨年度をすでに上回っている。誰でも使えるが、特に東京都、神奈川、千葉両県など関東圏の人の利用が多いという。

■運転手の確保と若返りが課題■

 住民が担う運転会員は、事業スタート時からは2人増えて現在20人。ドライバーには、生活利用の場合で片道1回につき800円の報酬を出しており、大江まち協では市からの補助金を受けながらやり繰りしている。

 当初からの運転会員の井上保子さん(70)は「鬼タクは良い取り組みで、町内の移送なので苦にならず、利用者の方々とお話することで交流できるのもうれしい」と目を細める。

 事業は地域に受け入れられ、成果も出ている。ただ、今後の事業継続性や需要拡大をにらむと、ドライバーの確保が課題となっている。

 運転会員の平均年齢は66・6歳。生活利用での運転件数が、多い人は月に20件ほど担当するが、報酬面や時間的な制約もあって他の仕事と掛け持ちすることが難しく、担い手が増えない状況だ。

 大江まち協では、以前は運転会員をまち協の広報紙などで募集していたが、今はドライバーになってもらえそうな人を探して直接交渉をする。鬼タク担当職員の林田恒宗さん(64)は「できるだけドライバーの年齢層を若返らせることが必要で、運転会員からの情報も頼りに、なり手を探しています」と打ち明ける。

 岡野会長(73)も「ドライバーは定年退職した人たちが中心ですが、若い人たちがアルバイトとボランティアの両方の感覚でやってもらえるような方法も考えていく必要があると思っています」と話す。

 

写真(クリックで拡大)
・高齢者の利用が多い鬼タク
・酒呑童子や鬼のラッピングをした車両も

このエントリーをはてなブックマークに追加
京都北都信用金庫
大嶋カーサービス

 

「きょうで満一歳」お申し込み

24時間アクセスランキング

著作権について

このホームページに使用している記事、写真、図版はすべて株式会社両丹日日新聞社、もしくは情報提供者が著作権を有しています。
全部または一部を原文もしくは加工して利用される場合は、商用、非商用の別、また媒体を問わず、必ず事前に両丹日日新聞社へご連絡下さい。