永楽館の歌舞伎衣裳を「絢爛」に展示 豊岡市立歴史博物館
2023年05月27日 のニュース
現存する建物で近畿最古の芝居小屋とされる出石の永楽館(兵庫県豊岡市出石町柳)。所蔵する多数の衣裳が今春、市文化財に指定された。これを記念した企画展「絢爛・永楽館歌舞伎衣裳展」が、豊岡市立歴史博物館(豊岡市日高町祢布)で開かれている。
明治34年(1901)に開館した永楽館は、歌舞伎や新派劇、落語などが上演されて但馬の大衆文化の中心としてにぎわったが、テレビの普及もあって昭和39年(1964)に閉館。惜しむ人びとの「往時のにぎわいを」との運動によって「平成の大改修」をして2008年に再開した。
かつての永楽館は芝居を上演するだけでなく、貸衣装業も営み、但馬から丹後まで各地の興行に貸し出しをしていた。
今も各地に歌舞伎舞台が多く残り、農村歌舞伎や子ども歌舞伎が演じられたりしている但馬では、江戸、明治のころは芝居が最大の娯楽として楽しまれていた。地元の人たちが演じる農村歌舞伎は、素人の演芸といえど衣裳に凝り、本格的なものを用意して舞台を盛り上げており、永楽館の貸し出しも大いに活躍した。
当時の衣裳は約1500点が残り、文化財に一括指定されたが、企画展ではこのうち、歌舞伎ならではの絢爛豪華できらびやかなものを選んで展示した。
ウール地に金糸で立体的な刺しゅうが施され、サンゴやガラスも使われている「宝船鶴亀文様打掛」の迫力あるデザイン、着物地が見えないほどにビッシリと刺しゅうされた「雲竜水虎文様四天」の細やかな技術など、見どころが多く、同館文化財調査員の山根真美子さんは「人びとが芝居を楽しみにしていた様子に思いを寄せながら見てほしい」と話している。
会期は6月27日まで。時間は午前9時から午後5時までで、月曜休館。入館料は一般500円、学生300円、小中学生250円。電話0796(42)6111。
写真(クリックで拡大)=豪華な衣裳が来館者を出迎える