一人だけの野球部員、最後は大勢でと手作り卒部式
2023年03月10日 のニュース
京都府福知山市大江町金屋、大江高校の伝統ある野球部を部員一人だけで守り抜き、このほど卒業した土永健嗣君(18)。そんな後輩をたたえようと、かつて野球部に所属していた選手やマネージャーらが集い、思い出の詰まったグラウンドで卒部式を開いた。先輩たちが土永君を囲み、感謝状を贈呈。「これからも頑張って」と、温かく背中を押した。
土永君は1年の春に入部。当初は5人の部員がいたが、3年生の卒業などで、9月ごろからは一人だけになった。それでも恩師らの励ましを受け、部にとどまって練習を継続。連合チームの一員として、大会にも出場した。
卒部式は、2020年までに通算10年、同校野球部の監督を務め、現在は府立海洋高校(宮津市)副校長の梅原寿夫さん(58)やOBで元主将の塩見忠弘さん(40)らが企画。1月から準備を進め、4日に開いた。
呼びかけに集まったのは、マネージャーを含めて20歳~48歳のOB・OGたち。当時の保護者会と梅原さん、土永君の母の朋子さん(45)も駆けつけ、総勢約60人が見守るなか、OB代表が感謝状を贈り、拍手で3年間の頑張りをねぎらった。
土永君は、母の朋子さんに花束を手渡し、「毎日弁当を作り、支えてくれてありがとう」と伝えた。受け取った朋子さんは「一人でよく続けてこられたと思います。先生たちの支えに感謝です」とほほ笑んだ。
集合写真を撮影したあとは、ヤングとアダルトチームに分かれ、親善試合を楽しんだ。土永君は、ヤングチームの一番打者を務め、初球を振り抜いて快音を響かせ、安打を記録。「めっちゃいいバッティングやん」と、OBらを驚かせていた。
塩見さんは「野球部にOB会はなく、世代を超えてこれだけの人数が集まったのは、これが初めてです。このような機会を作るきっかけを与えてくれた土永君には、感謝です。盛大に送り出せて良かった」と喜んでいた。
■やめたいと何度も-歯を食いしばり練習■
「部をやめたいと思うことは、何度もあった」という土永君。それでも、監督の神崎蓮教諭(27)と部長の山口拓哉教諭(29)、多賀野博講師(34)ら恩師の励ましを受け、練習が制限される環境のなか、歯を食いしばって続けてきた。
3年生で迎えた最後の夏の京都大会には、京都八幡など4校の連合チームで出場。初戦で桂に22-1の大差で敗れたが、土永君は2打数2安打で、チーム唯一の打点1を記録し、有終の美を飾ることができた。
「何事も継続できないタイプだったけど、みんなが支えてくれたから、最後までやり抜くことができました。卒部式は、みんなに祝ってもらえてうれしかったです」と晴れやかな笑顔を見せた。
大阪の調理専門学校に進学が決まっていて、「時間ができれば草野球でのプレーも考えたい」と話している。
写真上=土永君のためにOBらが集結した
写真下=OB代表から感謝状を受ける土永君(右)