月の出を待って拝む「月待ち」 行事を絶やさぬようにと、コロナ対策し継続
2023年01月28日 のニュース

絆深める機会にも
月の出を待って拝む信仰をもとに始まった「サンヤハン」と呼ばれる行事が、京都府福知山市三和町の菟原下一自治会で続けられている。毎月25日の夜に行われ、住民同士のつながりを深める機会になっているといい、少しずつ形を変えながら、今も残っている。
月を信仰の対象とし、特定の月齢の日に仲間が集まり、飲食を共にしたり、拝んだりする「月待ち」という行事の一つ。月待ちは、江戸時代に全国的に流行したというが、近年は生活様式の多様化などで、その多くが消滅している。
そんな中、菟原下一自治会では、かつて1~9組の全組で行われていたが、現在は2組(12世帯)のみになったものの、途切れずに続いている。組集会と併せて実施され、今月25日には当番の細尾節雄さん(71)宅に、9世帯から1人ずつが訪れた。
みんなで般若心経を唱え、神棚に供えた洗米を、組長と細尾さんが食べた。全員マスクを着用し、3回唱えていた般若心経を1回に、参加者全員で食べていた洗米は、組長と当番の人のみにし、新型コロナウイルス感染防止の対策をして行った。
同自治会の藤田悦治さん(93)によると、70年ほど前までは、般若心経を唱えるほかに、当番の家の人が油揚げの炊き込みごはん、だしじゃこを準備し、みんなで食べていたという。
「戦後の食糧難の時代のため、昔は炊き込みごはんはごちそうでした。信仰心で集まっていたというよりも、“おいしい食事が味わえる日”という感じでしたね」と振り返る。
今月のサンヤハンを無事に終え、細尾さんは「伝統をつないでいこう、との思いで継続しています。以前は別の日だった組集会とサンヤハンを同じ日にするなど、変更された部分はありますが、近所の人が集まって親睦を深める機会になっているのは、今も昔も変わりませんね」と目を細めていた。
写真=神棚に向かって般若心経を唱える