鋳物で球体スピーカー エクセディ鋳造が製品化
2022年07月01日 のニュース

京都府福知山市拝師の鋳物製造会社、エクセディ鋳造が、鋳物で作る球体スピーカーを製品化した。机に置いて大音量で流しても机は振動しないためノイズがスピーカーに戻って来ず、クリアな音を実現。すでに意匠登録を受けており、秋の販売開始を目指している。
高温で溶かした金属を、型に流し込んで冷やし固めることで複雑な形状の製品を作り出す鋳物。同社は産業用車両製品や排水集合管、ディーゼルエンジン用製品などを主に生産し、クレーンやフォークリフトのミッションケース・トルコンケースを得意にしている。
鋳物にはミッションが出す金属音や振動を抑える特性があり、「鋳物でスピーカーを作ってみたら面白いかな」と、プラント2工場長の川口政浩さん(59)が思い立った。どうせなら自社の技術が生かせる球体にしようと、丸いスピーカーに。試作してみると、驚くほど澄んで滑らかな音がした。
自前のブランド製品がほしいという話が社内で出ていた時期でもあり、「こんな良い音が出せるのなら」と、本格的に開発することになった。これまでの主力とは別分野の製品ながら、培ってきた技術、経験を注ぎ、昨年の夏から試行錯誤を重ねて製品化にこぎ着けた。
鋳物製品が振動を抑えることは、産業界では知られており、理想的な内圧を実現する球体スピーカーが良い音を出すことも知られてはいた。しかし、鋳物製の球体スピーカーを作ろうとすると、多くの業者では分厚く重過ぎる製品になり、成形に手間がかかるため価格も非常に高価なものになってしまう。それが、形状の自由度が高い消失模型鋳造方式を得意としているエクセディ鋳造なら、薄く軽い球体を自在に作り出せる。
苦労したのは音の調整。小さなスピーカーにするため、高音域の音を出すツイーター、低音域のウーファーなどの組み合わせは一からの経験となり、テストと調整を繰り返して理想の音に仕上げてきた。
完成したスピーカーの商品名は、外見から「月歌」に決定。直径320ミリで、重さは17キロ。価格は1セット30万円ほどで検討している。同社は「販売開始後も、音楽ファンの声をフィードバックして製品を磨き上げたい」と話している。
写真=製品化した鋳物の球体スピーカー「月歌」