和紙に欠かせぬトロロアオイ 農家減少で障害者施設が栽培

2020年11月15日 のニュース

 手漉き和紙作りで粘材として使われるアオイ科の植物・トロロアオイ。近年栽培者が減る中、関東地方からトロロアオイを取り寄せ、和紙作りをしてきた京都府福知山市大江町二俣の田中製紙工業所で、この秋から大江町産も使えるようになった。地元の農家が、栽培者が減っている危機的状況を知り、障害者福祉施設と力を合わせ、田中製紙の助けになればと作り始めた。

 江戸時代から丹後和紙(丹後二俣紙)の製造を続ける田中製紙では、自家栽培のコウゾを原料に紙漉きをしている。コウゾの繊維を絡み合わせて和紙にするには、トロロアオイの根に含まれる粘液が必要で、その働きによって厚さが均等な紙を作ることができる。

 田中製紙では現在、茨城県の栽培農家からトロロアオイを取り寄せているが、近年、高齢化などが原因で栽培をやめていく農家が増加。将来供給を受けられなくなるかもしれない-と心配していた。

 そうした中、佛性寺で農業を営む小澤五男さん(65)が、宮津市内で紙漉きをする女性のフェイスブックで、トロロアオイの産地が消滅するかもしれないという情報を知り、田中製紙代表の田中敏弘さん(58)に、「栽培しましょうか」と打診。田中さんからは「ぜひ作ってほしい」と依頼を受けた。

 小澤さんは、宮津市内で紙漉きをする女性からトロロアオイの種をもらい、4月下旬からビニールポットに種をまいて育て始めた。小澤さんが監事を務める大江作業所(二俣)にも声を掛け、通所者(仲間)の収入にもなるため、栽培を勧めたところ、取り組むことになった。

 5月に自宅近くの畑に15鉢の苗を移植。作業所には6月に30鉢を渡した。作業所では地域住民から借りた畑に移植して、通所者や職員が力を合わせ育てた。

 両者とも11月10日に収穫。その日のうちに田中製紙にトロロアオイの根を持ち込んだ。

 初めての栽培だったため、量としては少なかったが、出来は上々で、田中さんは「ここまで大きく、立派なものを作ってもらい、ありがたい。これから安心して紙漉きができる」と喜んでいる。

 作業所では、残った株から種を採取する計画で、田丸誠人施設長(56)は「今後も栽培を続け、収穫量を増やしていきたい。少しでも和紙作りの役に立てばうれしい」と言う。

 小澤さんは「今後は作業所が中心となって栽培を続けてもらい、支援や指導に力を入れていきたい」と話している。

 

写真=トロロアオイの出来を確かめる田中さん(右)ら

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