重量100トン、鉄道のまち福知山の遺産 C58形56号機

2020年01月02日 のニュース

 京都府福知山市広小路通りに面して福知山鉄道館ポッポランド2号館がある。館内に静態保存される蒸気機関車はC58形56号機。かつて福知山鉄道機関区に配属され、地元でも活躍した。もくもくと煙を上げて力強く疾走するSLがけん引する客車に乗ると、体に伝わる豪快なドラフト(排気)音、耳をつんざくような汽笛に、まるで生き物に運んでもらっているようなわくわく感があった。旧国鉄勤務時代に、機関士として展示車両の運転経験があり、鉄道館の館長もしていた足立和義さん(81)=和久市町=に、展示車両を見ながらSLの仕組みを教わり、運転時の思い出などを尋ねた。

C58形56号機は1939年、川崎車輌株式会社で製造された。旧国鉄下関機関区から61年に旧福知山機関区へ転属し、68年秋には福井国体でお召し列車をけん引。70年に廃車になるまで9年間、舞鶴線や小浜線を中心に活躍した。引退までに地球を20・5周、約82万1500キロも走ったという。

廃車後、昭和新町の旧北丹鉄道福知山西駅跡の公園で長年、静態保存されていたが、福知山線開通100周年の節目の99年秋の夜間、大型トレーラーに積んで現在地に移転された。

足立さんは「全長が18メートルもあります。高さは3・9メートル、総重量は100トン余り。動輪の直径は1・5メートル以上あるんですよ」と車両を一周し、正面や運転台の左右側面、後部に取り付けられたナンバープレートについて説明。「最初の形式記号Cは3軸、次の形式番号は50から99までが炭水車を連結するテンダー機関車、10から49までの場合は本体に石炭と水を積んだタンク機関車です。最後の56は製造番号」と教えてくれた。

■機関士と機関助手が阿吽の呼吸で運転■


SLが走る仕組みは、簡単に言えば、石炭を燃やしてボイラーの水を蒸気に変える。その蒸気をシリンダーに送り、ピストンを動かして動輪を回転させる。
側面から眺めると、下方は走行関係の装置で大きな3つの動輪や、それをつなぐ連結棒が見えるが、中央の主動輪には、シリンダーに送られた蒸気でピストンを動かし、その往復運動を伝える主連棒が付く。ブレーキは空気の力でかける。横に長い円筒形の「空気だめ」も見られる。
上方には、上り勾配で動輪と線路の摩擦力を高めるためにまく砂をためておく「砂箱」や蒸気の量を調節する加減弁が中にある「蒸気だめ」、ボイラー内の圧力が高くなり過ぎたとき、蒸気を逃がす「ボイラー安全弁」、蒸気の力で発電して前照灯や運転台の照明に使う「タービン発電機」などが並ぶ。
機関室では機関士、機関助手が阿吽の呼吸でSLを動かすが、とても狭い空間。アクセルにあたる加減弁ハンドルやブレーキ弁ハンドル、前後進を操作する逆転機、ボイラーに水を送る注水器、石炭を投入する「焚口戸」、そして圧力計や速度計などの機器類が並ぶ。

■狭い運転台、暑く過酷な環境で働く■


「SLの機関士は当時、花形の職業でした」という足立さんは1957年に旧国鉄職員に採用された。SL全盛期で、最初の配属先の旧福知山機関区にはC58のほか、動輪の直径が1・75メートルあって最高速度が100キロ出る山陰線や福知山線などで活躍したC57、いま福知山駅南口公園で転車台に乗った姿が見られるC11など50両以上が配置されていたという。

採用されたのは18歳の時。「下積み時代があり、石炭の灰や煙が詰まった煙管の掃除を、顔を真っ黒にしながら2年間続け、釜たきの厳しい訓練もありました」と苦労を語る。

「機関助手となり、念願だったSLの運転台に乗車したものの、炭水車に積まれた石炭をスコップで運転台の焚戸口に移す仕事はハードでした。とくに、勾配に差し掛かると、絶え間なく作業が続きます。火室に均等に適量を入れる必要もありました。火室の温度は1千度以上になるので、とくに夏場は暑さとの戦いでした」と過酷な環境を語った。

機関士になると「SLは、人と同じようなものだと感じました。同じ形式の車両でも癖があり、蒸気上りやブレーキの利きが悪い車両に乗務すると、大変でした。運転台が後部にあるため駅の停止線に止めるのには神経を使いました」と振り返る。

「それでもこの車両は私が生まれた翌年に製造された車両で、身近に感じます。今の高性能な電車のように運転は容易ではなかったですが、95年にJR西日本を退社するまでの長い鉄道人生の中で、運転できて良かった」。黒光りする車両に乗り込み、運転台の硬い椅子に座り、「幸せでした」と続けた。

 福知山鉄道館ポッポランド2号館の開館時間は午前9時から午後5時(11月から3月までは午前10時から午後4時30分)まで。毎週木曜日休館(年末年始なども)。入館無料。

1号館は近くの新町商店街にあったが、建物の老朽化により閉館した。その後、施設を福知山城近くに新設して2022年に再開されることになった。関係者の熱い要望と、思いに動かされた個人からの2億円の寄付が市を後押しした。

写真1枚目=「私が生まれた翌年に製造されました」と語る足立さん
写真2枚目=ローカル線用の客貨兼用旅客用のSLで、動輪は直径1・5メートル余ある
写真3枚目=狭く、多くの機器類が並ぶ運転台
写真4枚目=福知山鉄道館ポッポランド2号館

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