108段登ると… 観音寺裏山に「なげきの展望台」
2019年02月04日 のニュース

京都府福知山市観音寺、高野山真言宗・観音寺(小籔実英住職)に、変わった名前の展望台がある。その名も「なげきの展望台」。登った人たちが期待外れの景色を見て、嘆くことから名付けられた。
展望台は寺の裏山の中腹(標高約80メートル)にある。この場所は寺の土地で、電力会社の高圧線の鉄塔が立っていたが、約10年前に塔が撤去された際、コンクリートの土台が残り、寺が跡地利用にと展望台を設けた。
広さは約30平方メートルで、周りには柵を施している。下から展望台へと続くコンクリート階段の段数は、煩悩の数と同じ108段。展望台ができたころ、周囲の木々が邪魔し、下界の見通しはあまりよくなかったことから、展望台に登った人たちが「何もないやん」と嘆く声が相次いで聞かれた。
その後、小籔住職(67)が「ここを登りきれば『何かいいことがあるだろう』と期待しますが、何もないのが人生です。『何もない人生』こそが人生に与えられた一番の幸せなのです」などとの言葉を記した看板を展望台の柵につるしたところ、嘆きの声がやんだという。
ベンチを備え、地蔵を祭る祠も安置。今では木々の枝がせんていされ、見通しがよくなっていて、柵には参拝者が願い事を書いた絵馬もつるされている。小籔住職は「展望台では、日々の生活の中で『何もないこと』、すなわち無事であることのありがたさをぜひ感じていただきたい」と話している。