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両丹日日新聞2019年1月 4日のニュース

光秀に討たれた「猪崎どん」 川北で守られる城主の墓

山道の横にひっそり 明智光秀の大河ドラマ開始まで1年。ゆかりの地としてわく京都府福知山市だが、烏ケ岳の南のふもと、川北の集落奥には、討たれた側の猪崎城主・塩見姓の墓が残っている。「猪崎どんの墓」として地域に伝わっており、地元の塩見省悟さん(75)が手入れ、掃除をして大切に守り続けている。

 郷土史研究会の福知山史談会(芦田精一会長)によると、戦国時代の猪崎城は橘城という名前で、明智光秀に攻められて城主が川北まで落ち延び、現在の墓がある辺りで討ち取られたという。

 明智勢に追い詰められた城主は岩陰に隠れ、携えていた「長船の名刀」を口封じとして村人に与えた。しかし、光秀の家来の林半四郎が追手として村を訪れ、鬼気迫る様子で村人に落ち武者の行方を尋ね、脅された村人が城主の隠れる大砂利の岩場を教えてしまった。
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 城主は岩場に駆け付けた半四郎と一戦を交えるが、奮闘むなしく討たれた。一説によればこの時、城主は四尺七寸(約155センチ)の小兵ながら、面体は鬼人のごとく、両眼は太陽や月が輝いているような風ぼうで、手槍を振り回して戦ったという。

 その後、城主が倒れた場所に高さ約60センチの無銘の墓が建てられた。そばには、桜の古木があったが、村人の裏切りにあった猪崎城主の霊が浮かばれなかったためか、その木は高く伸びなかったという言い伝えも残る。

■砂防工事で水没案じ移設し建て替え■
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 省悟さんは、猪崎城主に連なる塩見株で、最初に塩見姓を名乗った先祖から数えて14代目になるという。墓の手入れは、市内へUターンしてきた1999年から取り組んでいる。

 墓の周りに散らかる落ち葉や雑草を取り除いたり、墓へ続く道の草刈りなどをする。「最近は木が生い茂り、草刈りが楽になりました。倒木があった時にはチェーンソーで木を切って処理したこともありますよ」と笑う。

 現在、省悟さんが手入れをしている墓は、父親の時代に建て替えたもの。1963年に、もともと墓があった場所一帯に大砂利川砂防えん堤が作られることになり、水没を案じた省悟さんの父親らが20メートルほど離れた現在の高い場所に建て替えた。
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 省悟さん宅にこの時の工事の写真が残っており、塩見株の住民たちが墓に上る階段を整備する姿、完成した新しい墓の様子などが写されている。

 新しい墓には、城主が討ち取られたとされる日付「天正八年八月廿日」と「塩見大膳播磨守家利之墓」や、「菴(庵)我庄井(猪)崎城主」の文字が刻まれている。由緒を書いた立て看板もあったというが、今は無い。

 代々、川北の塩見株の人たちで手入れをしてきたが、今は省悟さんを含めて3人だけになった。墓参りは全員でするが、高齢化の影響などから、掃除や手入れは省悟さんだけで続けているという。

 「祖父や父親の時代には、数人で掃除をしていて、子どもだった私も何度かついて行ったことを覚えています」と懐かしむ。「祖父、父親と手入れをしてきたので、それに倣ってやっています。元気なうちは続けていきます。川北に残る塩見株の本家として責任を果たしたい」と話す。

 猪崎城主の名は、川北の墓には「塩見大膳播磨守家利」と刻まれているが、猪崎の塩見株に残る家系図では猪崎城主が塩見利勝となっており、家利と利勝が同一人物か、親子なのかといった詳細は明らかになっていない。

 猪崎には塩見株が20軒ほど残っており、各地に散った子孫らが集まる株講の時などに墓参りをしている。

 そのうちの一人、塩見勝行さん(68)は「猪崎の醍醐寺に先祖代々の墓があり、川北の墓の御霊もそちらへ移しています。でも、猪崎城主の最期の場所ということもあり、川北の墓にもお参りをしています」という。

 省悟さんとは友人同士で、「墓を大切にしてもらい、ありがたい気持ちです。いつもお世話になっています」と感謝する。


写真1=山道の横にひっそりとたたずんでいる
写真2=「塩見大膳播磨守家利」と銘が入った川北の墓
写真3=昔の写真を説明をする省悟さん
写真4=川北の塩見株の人が工事をする様子

    

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