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両丹日日新聞2016年1月 2日のニュース

TPPは怖くない 「一流の子牛育てる」志高く

和牛を飼育している和泉夫妻■和牛繁殖農家 和泉正行さん(三和町草山)■
 「子牛を売りに出すときは、自分の娘を嫁に出すとき以上にさみしい。もう二度と会えないから」−。福知山市三和町草山の和泉正行さん(63)は、和牛繁殖農家。経験は4年と浅いが、「一流の子牛しか育てたくない」と志は高い。

■管理徹底しエサは地産地消■

 母牛を飼って種付けし、生まれた子牛を市場へ出すのが和牛繁殖農家。子牛は肥育農家のもとへ行き、肉牛に育てられる。

 「和泉牧場」の牛舎には、母牛5頭、母牛として育成中の1頭、子牛2頭の計8頭がいる。名前は、子牛の雄が「げんき」、雌が「なな」。市動物園にいるサルの「ミワ」ちゃんと同じ名前の母牛もいる。

 妊娠してから出産まで約8カ月、さらに出産してから約8カ月間飼育し、セリへ出す。この間、できるだけストレスを与えないようにして、わずかな時間でも晴れていれば屋外に出すようにしている。

 「365日、牛を主体にして生活しています」という一日の始まりは午前6時。牛乳とパンで軽く朝食を済ませてから、2時間ほどかけて牛舎のフンの始末や餌やりなどをする。それからきちっとした朝食を取る。その後も、草刈り、餌やり、清掃、時期によっては田植えや稲刈りもこなし、夕方に我が家へ戻る。妻の房子さん(65)と母の君枝さん(85)も手伝う。旅行とは縁遠くなったが、「牛は子どものころからいて、好きだから」。 

■還暦前から始める■

 京都市で、スピーカーの製造や自営での本の卸などをしていたが、Uターン。亡くなった父の跡を継ぎ、還暦前から本格的に和牛繁殖に取り組み始めた。餌やりの経験はあったが、繁殖となると素人だった。

 「一生で、『やる』か『やらない』かの選択肢がある。これまでから迷いなく『やる』を選んできた」と和泉さん。分からなかったら、積極的に聞かないと済まない性分で、JA京都にのくにの担当職員や近隣の同業者に、とことん質問し徹底的に学んだ。

 食事は人間と同じ3回。与えている餌は、地域内で刈り取った草や自分で育てた稲わら。わらは天日干ししたものや、稲穂が付いたままのものも与える。また、草山の住民で作る「おたすけ隊」のメンバーの一人で、自分の田んぼのほか耕作放棄地も請け負って米作りをし、農地を守っている。

■「京のこだわり畜産物生産農場」登録■

 京都府が創設した「京のこだわり畜産物生産農場」に、昨年11月末に登録。これは、農場の衛生管理の徹底や地元産飼料の使用など、快適な環境整備にこだわった飼い方で、健康な家畜を育て、安心安全な畜産物を生み出す農場であることの証しになる。地域農業の担い手としても認定されている。

 JA京都にのくにからは、年間最高販売価格(去勢の部)を記録するなど競り市で優秀な成績を収めたとして表彰を受けた。

 関税撤廃など、日本の農業に打撃を与えると言われる環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)。「僕は全然怖いとは思っていない」ときっぱり。当面の課題として採算を合わせないといけないが、何より自信のある子牛を飼育する気構えで、海外にも目を向ける。

 和牛養殖農家は三和町ではわずか2軒。もっと増えてほしいと願っていて、「農家が増えて切磋琢磨すると、さらにいいものができる」と展望する。

 さらに、牛を飼うと牧草やわらが欠かせない。すると田んぼが必要になり、耕作放棄地が減ると期待する。 

■命への感謝 これまで以上に■

 幾度となく出産に立ち会った。獣医師に電話でアドバイスをもらいながら、出てきた子牛の足を持って引っ張り出したり、子宮に手を突っ込んで逆子を治したこともある。

 「命に携わる仕事だから、食材へ感謝する『頂きます』の意味をこれまで以上に感じています」 


写真上=和牛を飼育している和泉夫妻
写真下=晴れていれば屋外で日に当たらせ、ストレスを解消させる

    

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