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両丹日日新聞2015年11月18日のニュース

木を植え丹波漆の増産を 夜久野の講演会で文化財守る人ら切望

国産漆が足りないと訴えるアトキンソンさん 「なぜ日本産漆、丹波漆は必要か」をテーマにした講演会が、近畿唯一、全国でも数少ない漆産地の福知山市夜久野町で14日に開かれた。講師たちは大切な国産漆、中でも質の良い夜久野産丹波漆を途絶えさせてはいけないと強調。漆の木を増やしていくよう求めた。

 京都府無形民俗文化財に指定されている漆採集技術、丹波の漆掻きを守り伝えているNPO法人丹波漆が主催。会場の夜久野町平野、夜久野ふれあいの里体育館には関係者や市民ら大勢の人が詰めかけた。

 講師は4人。うち、日本文化に魅せられてゴールドマンサックス社の金融調査室長から文化財修繕会社の小西美術工藝社の社長に転身したデービッド・アトキンソンさんは、「文化財の修理に国産漆が全然足りない」と増産を求めた。

 小西社は300年を超える歴史を持ち、日光東照宮陽明門や伏見稲荷大社楼門をはじめとする国宝、重要文化財の修理業務で全国の8割を請け負っているという。

 こうした経営に携わる中で不思議だったことが、なぜ日本の文化財の修理に中国からの輸入漆を使うのかということ。「価格が安いからというのは理由にならない。わずかな金額の差だし、安ければいいというなら木造建造物も、みんな腐らない鉄筋コンクリートにしてしまえばいいという話になる。大切なのは本物か偽物かだ」と文科省などに訴え、今では国産漆を使えるようになった。

 しかし国産漆の採取量は全国で年間に1トン余り。夜久野産は5キロに過ぎない。国内の漆消費量は年50トン。「文化財だけでなく漆器など、ほかの用途でも日本産を増やしていくべき。木を育てるところから、採取し、塗るところまで全て日本の職人の手で行ってこその日本の漆器だ」と説いた。

 また、仏像修理などを行う公益財団法人美術院の藤本青一国宝修理所所長は、三十三間堂千住観音立像や平等院鳳凰堂阿弥陀如来坐像などの、日ごろ見ることができない修理現場の写真を見せながら、漆が仏像にどのように使われているかなどを詳しく解説。「膠は200年。漆は千年もつ」と、日本の文化財にとって欠かすことができない存在だということを浮き彫りにした。

 講演会場の外では、NPO丹波漆が車体に漆塗りした、京都交通の新しい高速バスのお披露目が行われた。

 関連行事として、15日には梅谷で漆の植樹祭が行われた。


写真=「文化財の修理に欠かせない国産漆が足りない」と訴えるアトキンソンさん

    

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