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両丹日日新聞2015年7月11日のニュース

小水力発電で電力自給自足 「電気代いらない村に」

勢いよく回る水車 再生可能エネルギーで夢のある地域にと、福知山市夜久野町畑地域の7自治会で組織する「七つの里づくり協議会」(越後正則会長)が、水量の豊富な谷川が多いという地の利を生かして、小水力発電を始めた。試行錯誤の末完成させた水車の発電機を今春、今里の富久貴の滝近くに設置。年内に本格的に稼働させ、民家1軒に送電する計画を立てている。

■水が豊富な地の利活用しようと 夜久野町畑■

 小水力発電は、ダムのように河川の水をためることなく、河川や農業用水などの水の流れをエネルギーに変える発電方式。電力会社主体の開発とは違い、個人やNPO、地方自治体など多くの事業主体が取り組んでいる。

 里づくり協議会が再生可能エネルギーに着目したのは、2011年3月の東日本大震災後。大震災に伴う原発事故によって、再生可能エネルギーと電力の地産地消が全国で注目を集めた。畑地域でも導入する方向でさまざまな方法を検討。地理的に太陽光発電や風力発電は難しく、一番期待できる水力発電施設の整備を考えた。

 協議会の活動の一環として計画し、まず、各自治会が自転車ホイールを使った簡易な水車を1台ずつ作って、地元の農業用水路に設置した。らせん水車による小水力発電の研究をしている京都市立伏見工業高校のグループに指導を受け、24インチの自転車ホイールに付けた18枚の羽根で水流で回転させ、バッテリーに蓄電する仕組みで作り上げた。完成後は地元のイベント・椿祭りでライトアップし、地域の交流拠点となっている軽食類を提供する「ななっこ」では、この電源を利用して「水車コーヒー」を作り、付加価値を高めて販売している。
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 この経験を元にして発電量の大きなものを作ることにし、小倉の有限会社・やくの農業振興団(中島俊則社長)と、高度な溶接技術をもつ市内拝師の鐡工房(笹倉鐡太郎代表)が一昨年6月から共同開発に取りかかった。水車のプロペラの軽量化、間隔の調整など試行錯誤を重ねて製作し、3月に設置した。

■30メートルの落差作り出し■

 地元のシンボルの一つ、富久貴の滝の下流から取水し、水車まで約250メートルの区間に直径15センチの塩ビパイプを引いて導水し、約30メートルの落差を作った。

 水は年中、枯渇することなく流れており、勢いよく流れ落ちる水が直径45センチ、52枚の羽根を持つ2基のステンレス製の水車を高速、安定的に回転させ、1・5キロワット前後の発電を続けている。

 一般家庭の電力消費量は一日10〜15キロワット時で、民家1軒分に十分に対応できると推定している。年内に電柱を立てるか、地中をくぐらせる形で電線を引き、水車から一番距離が近い民家に送電を始めることにしている。
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 2号機も近く製作し、今里地区にある街灯19基すべてに送電する計画。現在は年間の電気代が8万円ほどかかるうえ、蛍光灯の故障が多いことから3万円近くの維持管理費もかかっている。これをLED化し、水車で電源を賄う考えだ。

 協議会の副会長も務める中島社長は「畑地域の勾配が宝物。これを生かして小水力発電を売り物にした地域にすることで、電気代を払わずに暮らせる地域として全国に発信したい。過疎、高齢化が深刻ななか、夢のある事業に取り組むことで、都会の若者が魅力を感じて移住してくれるところにしていきたい。これからが本番」と意欲を見せる。

 福知山市地域おこし協力隊員に今年2月に委嘱され、熱い思いで静岡県静岡市から夜久野町畑(稲垣)に移り住んだ山田正利さん(42)は、4月の協議会総会で、情報発信促進・自然エネルギー実践部会長に選任された。
 「小水力発電で蓄電したバッテリーで農機具を使えれば省エネにもつながる。こうして作った米を、地球に優しい米として付加価値を高めて売ることもできると思う。小水力発電をテーマにした全国規模のイベントを畑地区で開くことも考えています」と積極的だ。


写真上=川から流れ落ちる水を受けて勢いよく回る水車
写真中=発電量を高めるためプロペラの軽量化など試行錯誤を重ねて製作した
写真下=取水源の上流にある富久貴の滝

    

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