「見直し」と「推進」の声 新文化ホール計画まとめ

2024年03月26日 のニュース

 京都府福知山市が、中ノの市厚生会館に代わる新施設として建設する「新文化ホール」。一部で計画の見直しを求める住民運動が起きている。「いろいろな話を聞くけど、何がどこまで決まっているの?」といった声もよく耳にする。現状をまとめた。

 市内ではここ何十年と、文化ホールを求める声があり、市は2022年7月に、新文化ホール建設に向けた基本構想、基本計画を考える検討委員会を組織した。地元の文化団体関係者、市民公募委員、外部有識者らで構成。築60年を経て老朽化している厚生会館を取り壊して新しく建て替えるとの市の素案をもとに何度も会合を開き、市民ワークショップ、ウェブアンケートなどを経て同12月に基本構想を策定した。建設予定地については、三段池公園や駅方面も含めて検討した上で、検討委員会として厚生会館跡地を選定した。この構想に対するパブリックコメントの募集、大学生や高校生へのヒアリングもして、23年7月に基本計画が出来た。

■市がめざすのは「文化振興の拠点」■

 市が示す新文化ホール像は「文化の振興を推進する新しい拠点」。文化ホール、展示スペースを備えるだけでなく、専門のスタッフが常駐し、施設内で市民による楽器や演劇、絵画の教室などが日常的に開催され、幅広い年代の人が気軽に立ち寄って、文化活動に触れて交流し、つながる施設をめざしている。

 基本計画では、新文化ホールを、鑑賞・体験▽人材育成▽交流▽創造▽安心・安全-の5つの役割を担う施設とするために、「ホール」「創造活動」「交流」「管理運営」「防災対応」の5つの機能を盛り込む。建設予定地の広さに合わせつつ、求められる機能の充実を第一にして、それぞれの機能に要する面積を試算している。

 各機能の骨子と想定面積は次の通り。

 【ホール】厚生会館の舞台は狭く、本格的なバレエ、演劇、バンド演奏などは難しい。新ホールは「優れた音響性能、多様な舞台芸術に対応できる機能」を優先する。市民の吹奏楽演奏からプロの公演まで対応できるように広げ、舞台裏なども確保する方針。

 客席部分は、固定座席で最低600席(厚生会館大ホールは1階部分の可動席約700席と2階部分に固定席約300席)を確保し、スペースが許す範囲で増設も検討。ホール、舞台裏、ホワイエ(ロビー)などを含む全体面積は2300平方メートル。

 【創造活動】市民が日常的に使えるリハーサル室、楽器や絵画などの練習室、展示室に使える様々な広さの部屋を設ける。面積は計500平方メートル。

 【交流】誰でも気軽に訪ねられる場とし、チラシの配架、作品展示のできるエントランスロビー▽交流スペース▽小さな子どもが遊べる場所などを設置。各スペースの重ねづかいも考慮し、面積は計300平方メートル。

 【管理運営】専門スタッフが常駐する事務室を置き、文化活動の企画や運営、施設の維持管理、部屋の貸し出しに対応する。面積は100平方メートル。

 【防災対応】周辺住民の一次避難所として創造活動、交流両機能のスペースを使う。想定される浸水深を考慮して主な機能は2階以上に設け、防災倉庫などに100平方メートルを充てる。

■建設工事費は45億~50億■

  これらに廊下、階段、空調機械室なども含めた施設全体の延べ床面積は約5千平方メートル。近年の劇場施設の建設工事費を、全国の事例などから推定すると1平方メートルあたり90万円~100万円で、全体の建設工事費は建屋のみで45億円~50億円を見込む。

 また、駐車場については、敷地内で一定数を確保(台数未定)するが、不足する場合は周辺の公・私営駐車場を活用することで補完していきたいとする。

 市は当初、24年度中に基本設計を完成させる予定でいたが、市民の意向をさらに見極める必要があるとして、新年度当初予算での予算計上を見送った。現在はより丁寧な説明などをするための準備をしている。

 市文化・スポーツ振興課の井上郷太郎課長(51)は「検討会での意見、市民の声を踏まえ、単純に厚生会館の建て替えをするのではなく、全く新しい施設を作ろうとしています。その方向性を示したものが基本計画。ホールや交流スペースなどの中身は、計画のどの部分を重視していくかで、ある程度変わっていく可能性はあります。市として、計画に詰め込んだ思いを市民に広く周知していきたい」という。

■市議会に請願2件■

 基本計画を巡っては、福知山市議会3月定例会に、「みんながよろこび北近畿に誇れる新文化ホールになるよう見直しの賛否を問う住民投票を求める請願」と「市新文化ホール整備事業の推進に関する請願書」の請願2件が提出されている。

 署名活動に取り組み、見直しの請願で代表を務める男性は「席数、駐車場、建設場所などについて本当にいろいろな意見があり、署名は8286人分が集まりました。計画には市民の意見が十分に反映されていないと感じています。市民の声をもっと聞き、計画の作り直しを求めたい」という。

 推進の請願の代表は「多くの議論があり、長い時間をかけてできた計画です。今後の人口予想、維持管理、旧市内の防災施設、まちなかの活性化といった視点に立つと、現計画の規模と内容で、他にない特徴を持った施設とすることが必要。微調整をしていくことには納得できるが、ゼロからとなると、真剣に考えてきた人の思いはどうなるのか」と語る。

 2つの請願は、27日に再開される市議会3月定例会本会議で採決される。

 

写真(クリックで拡大)上から
 ・建て替えが予定されている厚生会館
 ・新文化ホールの断面図
 ・新文化ホールの平面図

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