自分らしく生きぬく-看取りのお話 医師らによる劇に反響

2025年07月09日 のニュース

 最期まで自分らしい人生を考えるきっかけに-。一般社団法人福知山医師会が京都府、福知山市とともに市内で開いたイベント「人生の寺子屋『看取りのお話』」が今年春、大好評のうちに全4回の公演を終えた。その中で、医師、介護士、行政職員、看護師らで結成する劇団寺子屋による劇「自分らしく生きぬいた患者さんのお話」が人気で、医師会では反響を受け、今秋に向けた新たな企画も準備している。

 「人生の寺子屋」は福知山医師会が主催し、府中丹西保健所、市が共催する形で、2年ほど前から始まった。人生の最終盤で希望する医療やケアのあり方、住んでいたい場所などを本人、家族、医療福祉関係者らが話し合う「アドバンス・ケア・プランニング」(ACP、通称・人生会議)の普及、啓発を目的にしている。

 これまでは、看取りの経験がある医師会所属の医師たちが講演をしてきたが、昨年3月ごろの企画会議で、「楽しみながら、自分事として考えてもらおう」と劇に取り組むことにした。脚本は亡くなった患者さんについて講演することが多かった西垣内科医院(夜久野町額田)の西垣哲哉院長(65)が担当した。

 幅広い専門職の人たちが結集

 メンバーには福祉用具専門相談員、ケアマネジャー、消防職員など幅広い職種から約20人が集まり、医師会からは西垣院長に加え、渡辺医院(牧)の渡邉正院長(56)、古木内科医院(長山町)の古木勝也院長(61)が中心になって参加した。

 「死ぬんやったら自分の家の方がええわ」と言う末期がんの患者の物語で、自身の最期を前にした人の葛藤、患者の思いに寄り添う家族、在宅ケアを支援する訪問看護師やケアマネらの様子を、専門的な視点からの意見を基にリアルに描いた。一方で、重くなりすぎないようにコミカルな場面や演技も取り入れ、笑いあり、涙ありの内容にしている。最後は古木院長が率いるバンドが劇のために作ったオリジナル曲「リビング・フォー・トゥデイ」などを聞かせて、余韻を残しながら幕を閉じる。

 メンバーたちは昨年8月から練習を続け、11月に三和荘、12月に桃映地域公民館で公演。好評を受け、今年2月に夜久野、5月には大江でそれぞれ追加公演をし、いずれも定員を超える応募があった。

 大江公演では、涙を流しながら舞台を見つめる人の姿もあり、友人同士で市内から訪れた84歳の女性2人は「夫の介護の最中でもあり、すばらしい内容で涙がこぼれました」「両親の介護を思い出して感動しました。勉強になる話もあり、自分の子どもらに見てほしいくらいです」と絶賛した。

演じた側にも新たな気づき

 主役の患者を演じた西垣院長は、実際に診てきた患者の遺族から話を聞くなどして役作りを深め、舞台に上がった。「自分が診てきた患者さんで、すごく怖い顔をされる方がいましたが、あれは病気のことが怖かったんだと思う。劇を通じて患者さんや家族への理解が深まり、もっとしっかり地域医療に向き合わないといけないと思いました」と振り返る。

 かかりつけ医を演じた渡辺院長、バンドで参加した古木院長の2人は「最初に企画の話をされたとき、全くイメージが湧かず、『そんなことできるのか』と思いました」と笑いつつ、「練習や舞台を通じてほかの職場の方々との連携が生まれたり、在宅医療への気づきがあったりと、参加した自分たちが変わり、やって良かったと思いました」と話す。

 3人は「多くの反響に驚きました。でも、『劇が良かった』で止まっていることも多く、そこから一歩進んで考えてもらうために、これからも取り組みを続けていくことが必要だと感じています」と声をそろえた。

キャストを入れ替え今秋に公演を予定

 今年11月29日に市役所隣のハピネスふくちやまで実施が決まっている、台本は同じだがキャストを入れ替えて公演する。メンバーたちは「多くの人に見に来てもらい、在宅医療や看取りなどについて考えるきっかけにしてもらえればうれしい」と呼びかけている。

上から(クリックで拡大)
・細部にもこだわった迫真の演技でテーマを突き付ける
・練習に取り組んできたメンバー
・劇団寺子屋のメンバー
・公演を締めくくるバンド演奏

このエントリーをはてなブックマークに追加
京都北都信用金庫
大嶋カーサービス

 

「きょうで満一歳」お申し込み

24時間アクセスランキング

著作権について

このホームページに使用している記事、写真、図版はすべて株式会社両丹日日新聞社、もしくは情報提供者が著作権を有しています。
全部または一部を原文もしくは加工して利用される場合は、商用、非商用の別、また媒体を問わず、必ず事前に両丹日日新聞社へご連絡下さい。