丹波の漆掻き始まる 伝統の技受け継ぎ夜久野高原で初鎌
2024年06月13日 のニュース
漆工芸や文化財保護に欠かせない漆の採取、漆掻きが京都府福知山市夜久野町の夜久野高原で始まった。府無形民俗文化財に指定されている「丹波の漆掻き」の技術を守り伝えているNPO法人丹波漆(高橋治子理事長)が、その年最初に漆の木に刃物を当てる初鎌を迎え、野山に感謝の気持ちを捧げてシーズンに入った。
初鎌をしたのは10日、夜久野町平野の府緑化センター内にある、漆の木の試験園。日本各地の漆が栽培されていて、受粉の都合で伐採することになった3本を、有効利用するために漆採取することになった。
高橋理事長をはじめ、夜久野に移住して11年目の山内耕祐さんら丹波漆のメンバー4人が集まり、漆に一礼して作業が始まった。樹皮を専用の道具で削り、傷をつけて染み出す漆の液を採取するのが漆掻き。どこに最初の傷をつけるかで採取量が違ってくるため、木の枝や幹の状態を慎重に見極める。みんな経験を積んできているものの、大事な初鎌とあって、大ベテランの岡本嘉明前理事長が指導役を務めた。
今年は新しい顔ぶれも参加。祖父、父も漆掻きをしていて自身が3代目になる夜久野町直見の中島紳之介さん。25歳ながら猟師、家業のジビエ精肉の仕事もしていて、以前から漆にも興味を持っていたという。岡本さんに手ほどきを受けながら、樹皮に刃をあてていった。
初鎌の様子は嵯峨美術大学の岩崎陽子准教授と学生6人、漆芸作家らが見学に訪れ、記録写真を撮ったりしながら熱心に見入っていた。
漆掻きは4日ごとに木の傷を増やして採取量も増やしていく。夏の盛りが漆の盛りともなり、作業は10月末ごろまで続く予定。1本の木から採取できるのは1シーズンで牛乳瓶1本分ほど。今年は丹波漆が植栽してきた木と合わせ約20本で採取する。
写真(クリックで拡大)=美大生や作家らが見守る中、岡本さんに指導を受けながら漆の木に刃物をあてる中島さん(右)